第2話 兎は美しい、”正しい”とされる存在になったと他者に認めてもらいたい
「わたしは美しくなった。今までの醜い自分ではない」
「美しくなったという事実を知ってもらいたい。もっと、たくさんの他者に美しくなった”わたし”を見てもらいたい」
「あの憎いオオカミやオオカミ達にチヤホヤされていい気になっていた兎たちを見返してやりたい」
兎はパーティーや街に繰り出すようになります。オオカミや他の兎が集まるところ、つまり、美しくなった自分を披露できる場を求めるのです。
そして、欲しかった言葉をたくさん聞けるようになります。
「綺麗なお耳ですね。僕もそんなお耳が欲しい」
「今まで見た中で一番美しい毛並みだ。俺にも撫でさせてくれないか」
他の兎らの”嫉妬”の視線やヒソヒソ声の嫌味さえ心地よく感じます。かつての自分の視線であり、自分の声であったのにもかかわらず……。
こうして兎は、オオカミから相手にされない他の兎を見下すようになります。なにせ、自分の方が”上等な”兎なのですから当然です。
わたしには見下す権利がある。だって、こんなにも”努力”をしたのですから、酷い誹りに、苦痛と理不尽に耐えてきたのですから。わたしの態度に文句があるというのなら、最低限の”努力”をしてから言ってほしいものです。
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