第3話
外は桜の花が咲き誇り、小鳥たちが気持ちよさそうにさえずっている。
路地には丸くなった猫が思う存分日の光を浴びてお昼寝しているし、空き地の緑の中にはモンシロチョウ。
鮮やかな緑、小さな花、飛び交う虫達……みんな待ち焦がれた春を謳歌している。
そんな気持ちのよい春の昼下がり、あたしは
「ううっ……」
泣きながらイクちゃんの膝にすがり付いていた。
アパートは飛び出して、イクちゃんのいる実家に逃げ込んだんだ。
「はいはい、泣かないの」
「うえーん」
イクちゃんに優しく諭されたって、涙は止まりっこない。
「ったく、しょうがないのね。隼人は仕事なの?」
「多分……夕方に……ひっく」
説明にも何もなっていない答えを返すあたし。
イクちゃんは呆れたようにため息をこぼした。
今はまだ春休み。
あたしは4月から先生のアパートに転がり込んだというか、無理やり連れ込まれたというか、……同居生活が始まった。
まさか突然同居なんて思いもよらなかったけど、大好きな先生といつも一緒に居られるのはうれしい。
だから張り切っていたんだけど……。
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