第5話 決戦の果てに


 そんなわけで、俺は魔王軍最強パーティーのメンバー一人ずつと戦う事になった。

 まずは四天王が相手だ。どいつもこいつも異形の姿をしていて、かなり手強そうだったが……。


「極大魔法、デッドエンド・スクリーマー!」

「ぐああああ!」


「聖なる光よ、魔を滅せ! セイクリッド・ホーリーブライト!」

「うわあああ!」


「筋肉至高拳奥義、ウルトラマッスルインパクト!」

「げふう!」


「勇者専用究極剣技、アルティメットストラッシュ!」

「ぎゃあああ!」


 実際、四天王はめちゃめちゃ強かった。だが、現在の俺はそのさらに上の力を得ていた。

 勇者パーティーメンバー四人からコピーした、それぞれの最強技を駆使して、魔王軍四天王を次々と撃破。

 残るは、魔王のみとなった。


「ば、馬鹿な。最後の一人がここまで強いとは……と言うか貴様、勇者パーティー全員分の必殺奥義が使えるのか?」

「ふっ、まあな。今の俺は、全人類最強かもしれないぜ」

「ぬうう……!」


 まさか四天王が全員倒されるとは思わなかったのか、さしもの魔王も驚いていた。

 ふふ、いいぞ、ノッてきた。この調子なら、魔王だって倒せるかもしれない。


「ならば、我も本気を出そう。見るがいい、我が最終形態を! はあああああ!」

「!?」


 魔王が魔力をみなぎらせ、パワーを高めていく。

 やがて全身を覆う鎧が弾け飛び、魔王が真の姿を現した。

 青い肌、大きな角、三つの顔、六本の腕。背中には巨大な翼が生えている。

 それが魔王の最終形態だった。まるで邪神だ。姿も禍々しいが、すさまじい魔力をまとっているのが分かる。


 ヤバイ、ここまで強いとは。勇者パーティー四人分の能力を駆使しても勝てそうにないぞ。

 こうなったら……一か八か、アレをやってみるか。


「人類代表として、正々堂々戦う事を誓おう。勝負の前に、握手してもらえるか?」

「ほう、意外と礼儀正しいな、貴様。よかろう」


 六本ある腕のうちの一本を動かして、魔王が手を差し出してくる。

 俺は右手を伸ばし、魔王と握手を交わした。


 ……よし、上手くいった。

 今ので、俺は魔王軍最強のラスボスである、魔王の能力をコピーして自分の物にした。

 悪いな、魔王陛下。あんたの力で、あんたを倒させてもらう……!


「はあああ! 究極暗黒魔法、ギガアルティメットダークネスフレア!」

「ぬっ、馬鹿な、魔王である我しか使えぬはずの究極魔法を!? ええい、ならばこちらも同じ魔法で迎え撃つまで!」


 俺と魔王、双方が放った究極暗黒魔法が激突し、すさまじい爆発が起こった。

 田舎の村は消し飛び、周囲の森や山々も粉々になって吹き飛んだ。


 爆風が治まった後、荒野となった大地に立っていたのは……俺だった。

 俺と魔王は、同じ究極魔法を撃ち合った。魔法そのものは互角でも、魔力や肉体の強度は魔王の方が上だ。

 まともにやり合えば、勝つのは魔王だ。

 ……まともにやり合えば、だが。


 俺は魔王の能力だけではなく、勇者パーティーの能力もコピーしている。

 そこでそれらを最大限活用させてもらったのだ。


 究極魔法を放つのと同時に、全ての能力を発動、全開にする。

 僧侶セレナの白魔法を駆使して、防御魔法を展開、全身に強化魔法をかける。

 武闘家マッスルの能力を使い、筋力を限界まで増幅、スピードも上げておく。

 魔法使いスカーレットの能力、魔力増幅で魔力を限界まで高め、暗黒魔法への耐性を付与しておく。

 最後に剣を抜き、勇者サイラスの最終奥義、『デモンスラッシャー』を発動した。


 究極魔法同士が激突したところへ、ダメ押しの追加攻撃を受け、さしもの魔王も耐えきれなかった、というわけだ。


「ぬうう、馬鹿な、この我が押し負けるとは……ショウとやら、もしや貴様こそが真の勇者だったのか……?」

「いや、残念だが、違う。俺はただの、『ものまね師』、だ……!」

「……そこは『俺こそが真の勇者だ!』と言ってほしかったな……」


 ごめんな。嘘がつけない性分なもので。


 ともあれ、俺の活躍によってラスボスである魔王を倒す事ができた。これでもう魔王軍はお終いだろう。

 色々とヤバかったが、最終的にはハッピーエンドかな。


「村を滅ぼしておいて、なにがハッピーなのよ……」

「あっ、受付のお姉ちゃん! 村の人達も、生きていたのか? いや、魔王を倒して世界を救ったんだから、多少の犠牲はさ……」


 なんでも村の連中は地下にシェルターを作っていて、俺と魔王軍最強パーティーが対決している間にそこへ逃げ込み、白魔法が使えるやつらが防御魔法を駆使して身を守っていたとか。

 死傷者はゼロで、村の住民やギルドの連中は全員無事らしい。もっとも、俺と魔王との激突によって地上の村は消えてなくなったわけだが。

 住居を失った村人達に詰め寄られ、俺は村の復興に協力するはめになった。

 やれやれだぜ。まあ、村の娘連中にはモテモテになったからよしとしとくか。


 ちなみにサイラス達、勇者パーティーのメンバーはしっかり生きていて、世界各地で魔王軍の残党狩りをしているらしい。

 俺が魔王を倒した事について「あいつならやってくれると信じていた」とかなんとか言っていたそうだが……よく言うぜ。


 勇者パーティー全員の能力をコピーした上に、魔王軍最強の魔王の能力までコピーしてしまった。

 今の俺は、間違いなく全人類最強だと思う。勇者だろうが魔王だろうが、誰が相手であろうと負ける気がしない。


 いっそ、この俺が世界を支配してやろうか?

 ……なんてな。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追放ものまね師 勇者パーティーをクビになった俺は、スローライフを満喫…できない!? 之雪 @koreyuki2300

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ