第26話 おめでたい話

琴音が、帰宅すると、由香がキッチンで夕食の支度をしていた。

琴音が、キッチンへ行く。親子の会話が始まる。

「あら、お帰りなさい。今日は遅かったわね。」

「うん。ちょっとね。」

「今晩は、お母さん、お話があるの。」

「えっ、何?」

「まだ、内緒よ。」

微笑を浮かべて、鍋で、味噌汁を作ってる母親を見て、琴音は、言う。

「アタシも言いたいことがある。アタシもまだ内緒。」

そこへ、丁度、二階から降りてきた久留美が、言う。

「お姉ちゃん、お帰り。」

久留美は、いつも元気である。

そこへ、耕造が帰ってくる。

「ただいま。ん。なんで、呆然としているの。琴音。おぅ。久留美。ただいま。」

久留美は、耕造の腰に抱きつく。

「ちょうどいいわ。このまま夕ご飯にしましょうか。」

由香は、料理の乗った皿を、テーブルに並べながら言う。

耕造は、手洗いとうがいを済ませて、席に着く。琴音も、久留美も、由香に、促されて席に着いた。

「いただきまーす。」

四人が一斉に、声をそろえる。銘々、箸と口を動かす。

由香は、フーとひと呼吸ついてから、口を開く。

「ねぇ、みんな。ちょっと目を閉じて、聞いてくれる。」

「なに?何だい。」

「なんで~。」

琴音も、久留美も、不思議そうだ。耕造は、マイペースである。

「いいから、みんな、目を閉じてよ。」

3人は、目を閉じる。

由香は、お腹に力を入れながら言った。

「お母さん、赤ちゃんができたの。」

「えーっ。」

3人は、目を開けて由香の方を見る。

「お母さん、ほんとう。本当なの。」

由香は、頷いて3人を見回す。

「今日、お母さん、病院に行ってきたの。そしたら、おめでただって。」

「やったー!」

「バンザイ。」

由香は、琴音と久留美に言う。

「2人に、弟か妹ができることになりました。」

耕造は、感極まって、

「お母さん、やったね!」

と言って、席を立って、踊りだす。

幸せな家庭が、ここにあった。長い旅路を経てきた4人に、新しい命の予感。互いに、心から喜びを分かち合った。家族がもう一人増えるということ。

確固たる意味も、答えも、まだ、よくわからないけれど、神様がこの一家に微笑んだということ。

琴音も、ただ、ただ、嬉しかった。自分が3人姉妹のお姉ちゃんになることが、嬉しかった。

耕造は、言った。

「俺も、また大きなお父さんの成るのか。頑張って、工場で働くぞ。」



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