限界社会人 年の瀬前の地獄と希望

白川津 中々

 やる気が出ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……



 年末が差し迫った今日この頃。一年のやり残し業務や来年に向けての仕込み等々がわんさか振ってきて処理しても処理しても終わらないタスク状況に脳のゲージがレッドライン。何もかも投げ出して休みたい。まるっと誰かにお任せして早めに長期休暇と洒落こみたい気分であるが、そういうわけにもいかないのである。なぜならチーム全員同じ状況だから。


「あ、加藤さんおはようございます。何泊目っすか?」


 出社して一番に目に付くのがボサボサ頭を振り回しながら作業をする加藤さんである。


「14……」


「体、大丈夫ですか?」


「仕事はできる……」


「そっすか! じゃ、頑張りましょう!」


「うん……」


 早朝6時の会話。冗談じゃない。そろそろ壊れる奴も出てくる頃合いだ。

 その点でいうと栗山さんが恐らくもう駄目になっているだろう。


「なんでブルマって廃止されたんでしょうね。女性社員全員ブルマならこの会社秒でアップルになれるポテンシャル秘めているのに。あー咥えてーなー。紺ブルマ」


 ほらね? 

 ちなみにうちの会社に女性社員はいない。


「笹山さんおはようございます。僕、コミケの原稿まだできてないんで、今日帰っていいっすか?」


 唯一元気なのが神崎であるが、お前この状況で帰宅できると思ってんのか。


「現時点で脱稿できていないという事はもう無理という事だ。諦めろ」


「いや、なんとかするんで、おなしゃっす! なんでもするんで!」


「……休日出勤する気があるのであればタスクの優先順位決めてスケジュール調整しろ。均して一日の勤務時間に余剰が出るなら帰っていいよ」


「! あざーっす! 僕、頑張るっす! 脱稿できたらお配りしますね!」


「いらない」



 限界が近い人、既に限界の人、未だ元気な奴。色々いるもんだ。この辺は個体差だな。



『ご覧ください! この立派なもみの木! まさにクリスマスといったところですね! 夜にはライトアップされるそうです! ご家族や恋人とぜひご来場ください!』


 ……そういえば今日はクリスマスか。シーズン感覚がボケてきてるな。


「笹山さん。どうしてあのもみの木ブルマ飾ってないんですかね。非国民?」


「知りませんよ私は」


「ケーキ食べたい……」


「後で買いに行きましょう」


「笹山さん! スケジュール調整できました! ギリいけます! 同人誌配りますね!」


「いらねーっつってんだろ!」



 年の瀬間近。

 我がチームは混沌を極めている。

 やる気が出ないなんていっている場合ではない。エナドリでも飲んで、脳を働かせよう……さぁ、今日も終電まで作業、作業だ……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

限界社会人 年の瀬前の地獄と希望 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ