囚人
冷たく暗い牢の底で、私は待っている。壁にもたれて。力なく。
外がうるさい。しかし私には関わりのないことだ。
私のことを覚えている者はいないだろう。
私には家族もなく、親友もなく。忘れ去られ、枯れ果てて、消えていく。
ああしかしただ一人、あの為政者はどうなっただろう。
彼だけは覚えていた。
怒りと喜びの声が聞こえる。遠く、遠く。
ここに色はない。色のあったときなど、とうに忘れてしまった。
ああ、何もかもどうでもいいのに、彼らはなぜあんなにも必死なのだろう。私は人を三人殺した。民衆はそれを正義と言ったが、今は忘れてこのザマだ。
ああ、幽かな旋律が聴こえる。彼の好んだオルガンだ。彼もまた諦めている。そして待っている。死神の訪れるのを。
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