第4話 幽霊探し

「それでこれからどうしていくんですか?」

「岩谷の線からあたっていくつもりだ。でも、本当にいいのか?

上はなにかを隠したがっているのは間違いない。それに反抗するってことは場合によっては警察官でいられなくなることだってあるんだ。それを」

「覚悟の上です。僕も納得出来てませんので。それに自分の最初の事件なんだから犯人が他にいるんだとしたら自分の手で捕まえたい…それだけです」

塚田さんは少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに肩を竦め

『やれやれ』

とでも言いたげな顔で大きく息を吐く。

「自首してきたヤツの名は『海藤 直哉』年齢は今年で29。職業は土建屋らしい。

動機は空き巣に入ったところ、被害者が帰宅して衝動的に殺害。そのまま逃げるも怖くなって自首してきたとのことだ。それで新米くんはこの自白内容を聞いてどう思った?」

「無茶苦茶。その一言ですね。現場の状況や近隣住民の証言とも大きく異なります。

でも、それを正しいものとしようとしている…。その理由は何なんでしょうね」

「決定的な証拠があったらしい。詳しくは俺も知らん、ので今、署にいるヤツに調べて、返事待ちってとこだな」

「それで、その証拠が来るまでジッとしているつもりですか?」

「バカ野郎。んなわけあるか。まずは岩谷から被害者が何者だったの迫れないか調べていくに決まってるだろ」

僕はその捜査方針に対し、シートベルトをしっかり締め目で同意を示す。

塚田さんは僕の言いたいことをわかってくれたのか、今度は優しい笑みを浮かべ車のエンジンを掛ける。

この事件はただの殺人事件ではない。

なにか僕たちの想像を超えるナニかが絡んでいるはずだ。そんな不吉な予感が漠然と胸の中にあった。

まず、被害者の生活痕がないこと。本当に生きていたのかとさえ思えてくるほどだ。

次に、事件解決を急ぐ上層部の意向。これに関しては本当にわからない。

ただのどこにでもありそうな殺人事件なのに上層部が介入したがっているということはそれだけの理由があるはずだ。それが分からない今は固唾を飲むのが精一杯だ。

「そんなに怖い顔するくらいなら捜査しなくてもいいんだぞ」

「え?」

「張り切るのは構わないが張り切りすぎて空回ることもある。気楽に行こうや、気楽にな」

「そうですね…ありがとうございます」

こういう時、頼れる先輩というのは本当に心強く感じられる。

考えるのはいつでも出来る。今は出来ることをやっていこう。そして、この先輩から多くのことを学ぶのだ。それが今の僕にできる最大限だ。

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容疑者AI トム・今本 @Y_Tom

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