第1夜 2024年 12月末 寒い夜の夢 4話目

今日も変わらぬ日々。朝目が覚める。

でもいつもとは少し違う目覚め方。

人の声で目が覚める。

部屋の外から女性と男性の談笑するような声がした。上官と…誰だ?

つい気になりドアに聞き耳を立てる。

上官とこんなに楽しそうに話す女って…?

我慢できなくなりドアを開ける。

ガチャリ


「明日香か。おはよう」


「あ、貴女が明日香さん!初めまして」


長い髪に隊では見ない細身のパンツスーツの女性。誰だ。見覚えはない。でもまた、何となく、距離の近さから親密な関係性の女性なのだろうと思った。


「上官、この方は…?」


「あー、なんだ、腐れ縁だ」


「何それ!…まぁいいわ。今日は本部からの要件を伝えに来ただけだし。でもこれからちょこちょこ顔出させてもらうからね」


女は成田と名乗った。話の内容から、隊の本部の人間だろう。危なくない場所で、ふんぞり返ってパソコンとにらめっこするような仕事の人間だ。

あまり好感は持てないまま、ヒールをカツカツとならして階段を降りていく。


「仲良いんですね」


「いや、ただの同期。あっちは出世組」


「上官だってお若いのに役職者じゃないですか」


「うちは本部が出世組、現場は役職持ってたって対して何にもならないんだよ。明日香も目指すなら本部目指しなよ」


目を細めて笑い、自室に戻る上官。

まだ30代と若いのに少し髪に交じる白髪、笑うと目元に出来る小皺も、苦労して今があるのだと嫌でも感じてしまうその姿に憧れていたのに。

上官のそのアドバイスは聞けません、と。心の中で呟いた。


………


階段を降りるとまだあの女がいた。

食堂でパソコンをいじっていた。いけ好かない。


「成田さん」


「あぁ、明日香さん。どうしたの?」


「成田さんと上官は同期なんですよね」


「そうだよ、今でもまだこの隊に残ってる同期は私ら含めて3人かな」


堂々とした態度に変な事を聞いてしまった気がして、変だと思われないように更に変な言い訳をしてしまう。


「…私、同期とかいなくて。同期って結構仲良いんだなって思っちゃって」


成田が目を大きくしたあと、ふふっと笑って目を細める。


「まあ、同期っていうか、元カノ?みたいなね」


また馬鹿にしたようにふふっと笑ってパソコンをたたみ、席を立つ。出口へ向かう成田の背中を見ながらなんとも言えない気持ちで頭がいっぱいになり固まってしまう。…元カノ…?

そんな人物、上官の害でしか無いじゃないか。

上官のあの笑顔を独占していたのか?

上官に毎日愛を囁かれていたのか?

上官と愛し合い、夜を共にしていたのか?

上官と…上官と…

頭が痛む。目も眩む。頭を掻きむしった。



「駄目だ……消さなくちゃ…」



私は食堂を後にした。



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面白い夢 備忘録 @Ailice_to_K

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