大学入試センター試験
マッシー
第1話 センター試験出題委員
大学入学共通テストは、その昔、大学共通一次学力試験(共通一次)や大学入試センター試験(センター試験)と呼ばれていました。
教授になった私がセンター試験の物理の出題委員を引き受けたのは、2009年でした。私は、その時に経験した不思議な出来事を記録として残しておこうと、こうしてペンを取りました。
現在の大学入学共通テストもそうですが、昔の共通一次やセンター試験は、駒場にある出題センターで作られていました。
出題委員は、3親等以内に受験生がいない大学の先生たちで構成され、科目ごとに分かれて、ひと月に一度、おおむね連続して3日間、出題センターに通って、2年かけて試験問題を作ります。
また、出題委員の先生方は、その期間を含めて前後3年間(合計8年間)、「自分は出題委員だった」と口にすることはできません。
それを破ると、公務員の守秘義務違反となり、大学を首になります。
出題センターのコンピュータは、すべてネットと切り離されていて、センター内のコンピュータでさえ、回線を通してデータをやり取りすることはできません。
3日かけて内容に改定を加えられた試験問題は、紙と当時はフロッピーディスクに入れた形で、入試センターの職員に引き渡されます。
その紙やフロッピーディスクの管理は厳重極まりないもので、紙が一枚でも不明になったら、問題を最初から作り直さなければいけなくなります。
センター試験の物理の出題委員長をしていた私は、その年の11月、印刷に出すことになっていた物理の問題にミスがないことをもう一度確かめるため、問題を入れたフロッピーディスクのコピーを取って、それをカバンに入れて福岡に帰りました。
試験問題を出題センターの外に持ち出すなど、本当はしてはいけない行為だったのです。
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