第14話 打ち解け

日が頂点に達したころ授業という名のガイダンスは終了した


「よし!お前ら!今日は終わりだ。気をつけて帰ろよー」


あら?もう終わり?弁当持ってくる必要無かったな…


まぁいいや、家で食べよ


「リュウカちゃんも一緒に帰らない?」


シイナからそんな提案が来た


「マジっすか!?帰りましょうよ是非とも!」


俺たちは一緒に帰ることとなった。やったぜ


シイナは手提げを体の前に持ち、ルゥは教科書が入るぐらいの小さなリュックを背負う


この学校ロッカーないから毎回教材を持ってかなきゃいけないのだるいんだよな〜


「リュウカちゃんって趣味とかある?」


「んー…読書。かなぁ」


「読書!実は私も読書好きなのよ!」


へぇ〜シイナも読書家なんだ


…俺とはジャンル…世界が違うと思うけどね


ぶっちゃけこっちに来てから児童学書とか随筆文とか、そうゆうジャンルの本は読んで無いんだよなぁ


だから何の本が好きとか言われたらあかんな…


「リュウカちゃんはどの本が1番好き?」


あかんって言ったじゃん!


「あっ、私こっちなんだけどリュウカちゃんどっちなの?」


門の付近まで来たシイナは右を指す。


良かったぁ…本の話題を掘り下げられずに済んだぜ


俺の帰り道は校門を出て真っ直ぐだ


「私こっちなんだ。ごめんね」


俺はスッと前を指す


「そっかー…ルゥと同じかぁ」


「ん、私と同じ」


シイナは少し残念そうだ


「じゃあ2人ともバイバイ。また明日!」


門を超えシイナは右へ歩いて行った


「「…」」


ルゥと2人きりになってしまった


少し気まずい空気が流れる


「ルゥはなにが好きなの?」


静寂を破るため、俺から話しかけることにした


「私は魔法開発」


「魔法開発か…複合魔法とか?」


「なにそれ」


「んーと…例えば水と風を合わせて水の斬撃を作るとか」


水の斬撃…なんか前もあったような…?


「あとは氷で剣を生成するとか…」


「ふむ」


興味を示したし手応えあり…っぽいな。話を掘り下げていこう。


「例えば今何を開発してるの?」


「今は熱魔法で火を出して火球を作ってる。でも大きくしようとすると消えてっちゃう」


熱が霧散してるな。熱が抑え込めれば魔力を無駄にしないで済むし…


「うーん…火球の周りに風の渦を作って熱を抑え込むとか?」


「!?」


その手があったか!みたいな顔をしている。


「やってみる」


今にも始めそうな雰囲気を出している


「いや、今やっちゃダメよ?ここ街中だし」


「…」



いやそんな見てもダメ。めっちゃ睨んでるけどダメ。


「ムゥ…」


頬をぷくぅと膨らませ、駄々をこねても叶わなかった子供のようにムスッとしている


…ちょっと可愛いな


「学校でやる?今日暇だし」


「!?」


その手があったか!みたいな顔してる


「あ、でもご飯食べてない」


お腹が空いたのだろうか。お腹を手でさすって難しい顔をしている


試したい欲望と食べたい欲望のどちらをとるのか悩んでいるようだ


「ならうちで先ご飯食べてく?」


「!?」


その手があったか!みたいな顔してる


いや圧倒的にデジャブ。喋りなさいな


「食べる!家どこ?」


「あそこ」


数メートル先の家を指差す


今気付いたが、仕方なく友達になって仕方なく一緒に帰ってるって感じだったけど…だいぶ仲が深まったんじゃ無いかな?


「丁度良い近さ」


どうやら、ルゥの家は学校まで俺の家の2倍の距離があるらしい


「おじゃましま…ムゥ」


ルゥがいきなり大きな声を出すもんで慌てて口を塞ぐ


そのまま2階まで口を塞いだまま連れて行き…

自室まで連れ込むと口から手を外した


「いきなりなん…キャ!ビックリしたぁ!」


目線を俺の手から他の場所に変えた瞬間に豚の宙吊りを見たようで死ぬほど驚いている


「これは私の食べ物。いきなりごめんね、1階で騒ぐと母が怒るから…」


「そう…なんだ…」


…ん?今目から光が一瞬消えたように見えたが…


まぁいいや


そういえば俺はこの部屋を転生した時から大きく模様替えしたのだ


まずベットを元々は壁の真ん中から扉側の奥の隅に移動した


説明してなかったがクローゼットは扉から入ってきた時に右手に見える壁の真ん中辺りに埋められている


机と棚の位置を交換し、クローゼットの横の隅に机を置き、机と壁に密着させる形で棚を置いている


クローゼットの反対の隅とベットの間に豚を宙吊りさせてあるのだ


そして部屋中央にはふかふかの丸いカーペットを設置した


これは少し値が張ったが、アズサ姉さんのいる図書館へ通い詰めて貯めた金で購入したのだ


アズサ姉さんはだいたい図書館で勤務(睡眠)しており、そこでご飯を要求すると図書館のスタッフルームまで連れてってくれる

そこでアズサ姉さんが作ったご飯を頂くことができるのだ


あ、と、は…クローゼットの中身があったな


クローゼットの中は7:3で分かれており7が服だ


服は空中に上着や制服を掛けていて、その下にある引き戸のついた木の棚には下着やワンピース、軽い小物をしまっている


棚の1番下が1番物が入るのだがそこは米を入れることにした


3には食事に関するものがしまってある


レタスのような高葉(コウハ)という名の保存のきく野菜一玉の芯を紐で括って宙吊りにし、下には冷蔵庫の扉と同じ開け方をする戸を持つ棚を設置した。その棚には皿や箸、スプーンなどの食器と包丁をしまっている


棚と棚の間にできる隙間にまな板を立てかけたのだが…


これまた丁度いい大きさなんだよなぁ


「ところで廊下の箱だけどあれってーー」


こんなもんかなと思っていたら急に現実に戻された


「あれ?あれはね私たちの生活費なんだ。」


「生活費…?」


「うん。うち完全放任主義の家庭だからさ」


「ごめんなさい…」


ルゥは嫌なことを聞いてしまったと謝る


「気にしないでよ!気にして無いから!」


返事をすることなく、ルゥはいまだ悲しい表情をしている


「取り敢えずご飯…食べよっか」


話を変えようと俺は立ち上がる


1枚の皿と豚を切る用の包丁をクローゼットに内包してある棚から取り出し、豚の近くに持って行く


今見えてる部分が豚の1番美味しいところなんだがそれを…


えいっ


その刃がギザギザしている包丁でぎこぎこと削ぎ落とす


「米食べたい?」


食べるならそれなりに時間がかかってしまうが…


「いらない」


大丈夫そうだ


皿に葉を敷き机に置いた


それから食器棚から串を2本ほど用意して切り落とした肉に刺して支えにする


そしてある魔法を使う


これは俺が1番初めに覚えた魔法…


ふぁいやー!!!


肉の下に火を起こし、強火で一気に焼き上げる。


今思えばこんなに魔法使ってんだから魔法適正検査とか余裕だろと思うだろ?

これは学校から配られた教材様の力だ


過去の話は置いておいて、そろそろいい感じに焼けてきたぞ


魔法の発動を止めてから串を肉から外して皿の上に肉を乗せる

またもや棚から、今度は刃が真っ直ぐな包丁を取り出して豚肉を一口サイズに切ると…


「よぉし!完成!」


「おー」


「あれ、思ったよりも反応薄め…」


「これ、毎日自分で作ってる?」


「うん」


「毎日同じ?」


「うん」


「ごめんちょっと引く…」


うわー…みたいな顔をしている


「なんで?」


「普通の子供はそんな逞しくない」


「平均だけが全てだと思うなよ!?」


うーむ…普通…ねぇ…親があれの時点でもうダメなんだよなぁ


「ま、いいや。食べてくれ」


カチャ…と箸を皿の横に置いた


「…」


…?一向に机に座り食べる気配がない


どうしたんだ?

俺の調理に何か…問題はありありだけど無いと思うが…


「その…私、箸苦手で…」


両人差し指をツンツンと交わらせ、顔を赤くしながら小さな声でそう呟いた


かわいい…かわいいすぎる


なにそのかわいい理由。おじちゃんフォークあげちゃう


…いや待てよ?もし仮にここで甘やかしてフォークを使わせよう。そしたらずっと自分のコンプレックスを解消出来ずに引きずって箸を使えないまま大人になってしまうのでは?


それはまずい


「じゃあ箸の使い方教えるよ」


リュウカはルゥに箸の使い方を教えることになった!


気分はさながら親のよう!


「まず箸の持ち方ってどんな感じなの?」


まずルゥの箸の持ち方を見ないことには始まらないが…


ルゥは箸を右手で持ち、箸をガクッガクッと不器用に動かす。


「持ち方自体は悪くない…が、力の入れ方が悪いのか?」


んー…なんか違和感…なにか見落としている気が済んだよな…


確か…


「ルゥの利き手ってどっちだっけ?」


「ききて?初めて聞く言葉」


利き手の概念ないのか?

いや単純にルゥが知らないだけかもな


なんかデジャブ…


「んーと…じゃあ書く時いつもどっちの手で書いてる?」


「左」


ルゥは左手を肘だけ曲げて挙げる


やっぱりか!

なんかペン持ってる時左だったような気がしたんだよ!


ちなみにペンはこの世界では名前が違うのだが、思い出せなかったので少し濁して話したのだ


なんだっけな名前…というかボールペンは無いんだよな。

あれ結構技術必要だし。基本鉛筆か羽根ペン


羽根ペンは決して安くは無いが鉛筆を使うのもなぁ…と思っていた愚かな俺は羽根ペンを買ってしまったのだ


そしてこいつはインクが必要でこぼさないかとわざわざ気をつけて持ち歩くのが嫌になり、無事我が家の鑑賞物となったよ


今は俺の机の端にちょこんと置いてある


しかも手紙を書くにしても相手いなかったからね!


話が脱線しまくってんな…


あっ!思い出した!


鉛筆は黒棒と呼ばれてるんだった

めちゃめちゃ安直な名前だった


「それで、それがどうかした?」


俺がしばらく無言であったため痺れを切らしたルゥはなにがしたいのかを聞いてきた


「あぁ、ごめんね。黒棒と同じ手、つまり左手で箸を持ってみて?」


「?」


心底不思議そうな顔をしながら取り敢えず俺の指示に従おうと思ったのか、持ち手を変えて箸を持つと——


「おぉ…おぉおお!!!」


ルゥはカチカチと上手に箸を動かしてみせた


持ち手を変えた瞬間に出来るのはおかしい…生粋の左手使いぐらいしか考えつかないが…


「やったね!ルゥ!」


「やりました。私」


箸をカチカチと動かしながら笑顔とドヤ顔を同時に行い右手をこちらに差し出した


なんだ?


「いえい、ピース」


ピースをしてきた


この世界たまに日本語じゃ無い地球の言葉を使ったりする


不思議なのだ。そもそもこの世界の人々が日本語で喋っている時点で


しかし考えても迷宮入りするだけなので、ありがたく今の状況を受け入れるしか無い


ルゥがご飯を食べている間、俺は何をしていたかというとボーッとしていた


この世界スマホとかが無いからやる事が無いとボーッとする以外の選択肢が限られてくるのだ


スマホといえば

転生してから3ヶ月間、スマホがない生活が非常に苦痛であった。前はやることがない時、隙間時間は大体スマホをいじっていた。こっちの世界に来たらそもそもスマホがないのでポケットの中が空いておりかなり不安だった。しかも当初文字も読めないため本が読めなかったし、暇な時間にすることもなく本当に苦痛だったのだ


今でこそなんともないが、不安で暇でどうしようもなかった俺が見つけたものこそが…!


睡眠なのだ


「リュウカ。食べないの?ご飯」


「私はルゥが魔法を使ってるのを見ながら食べようかなって」


「ふぅん」


ルゥが食べ終え、俺たちは再び学校にやってきた


校門から右に行き、道なりに進んで硬い土で埋められた緑のないグラウンドまで辿り着く


ここは魔法練習用の専用グラウンド


ちなみに校門から左に行くと芝生に満ちた広場が広がっている


そっちは俺の絶好の睡眠スペースだ


専用グラウンドの魔法を使っていいラインまで歩くと、俺はそこにレジャーシートにかたどった使わなくなったカーペットを敷く


そこに座り込み弁当を出して俺は飯を食べ始めた


「なんか上手くいかなかったら教えてね〜」


「ん」


ルゥはテクテクと俺から離れある程度離れると目を瞑った


そして…


ゴオオォォォ!!!!


ルウの頭上斜め前の位置に燃えたぎる火の玉が発生した


直径は推定…30…40…50…だんだんと大きくなっていってる…!


火球が2m級まで大きくなると熱波がこちらにまで押し寄せてきた…多分ここら辺から大きさが変化しなくなってしまうのだろう


…十分では?


「よしっ!やる!!」


ルゥがそう叫ぶと火球の形がみるみる変わっていく

火球は竜巻のような形に姿を変える


熱波がこちらまで押し寄せてこなくなったため熱を横方向に飛ばすことは無くなったが、今度は上方向に逃げてしまっている


「ルゥ!!そのまま上を丸く閉じるんだ!!」


「ダメ!!出来ないっ!!」


「風の形を変えるんだ!火球の周りをぐるぐる循環するように風を吹かせるんだ!」


「やってみる!!」


火球は一旦元の無秩序に炎を出す状態に戻ると、次第に立ち昇る炎が横に揺らぎだした。

立ち昇る炎が消えたかと思うと火球は丸みを帯び始め、どんどんと球体に近づく。

しばらく待つこともなく、完全な球体の火球が出来上がった。


おぉ…!!


「すげ…!!」


思わず息が溢れる

美しいその火球を見て誰が息を溢さずにいれようか?


その火球はまるで太陽のようで、辺りを一心に照らしつける


ただ、まだルゥはその火球を大きくするという目標を達成していないためか、


「まだまだぁ!」


火球を大きくし始める


しかし——


「キャッ!」


今までが上手く行きすぎていたのか、急に物凄い熱波を叩きつけたかと思うと一瞬にして消え去った


ふむ、どうやらこのやり方は火球を安定させるには向いているが、大きくさせるという点では向いていないらしい


となると…


「魔力切れ…」


まずい!!


今にも倒れそうなぐらいフラフラしているルゥの元へ駆け寄り、支えてやる


「眠い…」


今にも寝そうなルゥを抱き抱えてカーペットに寝かしつけてやる


「お疲れ様。一旦休みな」


先程の火球の改善点を考えながら、のんびりと弁当を食べ始めた

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