第七話 俺が止める……!

「十九番、一条史也いちじょうふみやが入ります」



 選手交代を告げるアナウンスを耳に入れながら、僕は自身のポジションに就く。


 そう、数分前まで浩二郎が就いていた最終ライン、真ん中のポジションだ。



 僕がポジションに就いてからしばらくして、吉田体育大学附属高校ボールで試合が再開される。


 僕はやや前線にポジションをとり、相手のカウンター攻撃に備える。



 吉田体育大学附属高校は上手くボールをキープし、相手にボールを奪わせない。


 

 時間は進み、後半三十四分、相手選手は一瞬の隙を突き、ボール奪取に成功する。


 その後ボールを細かく繋ぎ、吉田体育大学附属高校陣地内に入る。


 それを見て、僕はゴール前に位置をとる。


 ボールはペナルティーエリア手前に位置をとった相手選手に渡る。

 

 すると、パスを受けた相手選手は素早くドリブルを仕掛け、一人抜き去ると、そのままペナルティーエリア内に侵入する。


 そして更に一人を抜く。


 次の瞬間、ボールを持った選手が僕の目の前に現れる。


 一瞬だけ視線を右に移すと、もう一人の相手選手がゴール前に駆け上がる姿が僕の目に映る。


 僕の背後には、ゴールキーパーしかいない。


 

 僕はボールを持つ選手を注視しながら、誓うように心で言葉を発する。



 俺が止める……!


 僕の心の言葉からすぐ、ボールを持った選手が右足を僅かに動かした。

 

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