第10話 ことの発端

親の一度目の婚姻時は私は幸せだったと思う。

お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん。

そして姉。

お父さんとは時々大きな公園、砧緑地に行くのは楽しみだった。

家族全員で遊んだ。

ピクニックして楽しかった。


その回数が徐々に減っていった。


ある日の幼稚園。

お父さんが迎えに来た。

帰ろうとしたら、母も来た。


父と母が私から離れた所で何かを話していたようで

その間私はブランコで遊んでいたのだけれども

再度二人が近くに寄って来た時には何か分からないけれど母か父か手から血を出していた。

その日は私はお父さんの方と一緒に帰ったと思う。

姉は母親と一緒に帰ったと思う。

夜はどうしたか覚えていない。

何せ3歳頃の記憶だから。

だけれども、私はまだ詳しく覚えている。


場面、場面を。

何十年経っても覚えている。


翌日。


夫婦喧嘩などという言葉もまだ知らないので、

またブランコの場所でお友達皆に向かって

前日に見た光景を話していた記憶がある。


「昨日お父さんの手から血が出ていたんだー」と。


それが私の持っている小さいころの親の記憶。

それから高校生になる迄父親の顔を写真でも見れることは無かった。


親に愛された記憶はつらい記憶で塗り替えられていく。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る