第1話

「通行証はお持ちですか」

その一言で目が覚めた。馬車の運転手が何かを差し出しているのが小さな窓から見える。道はいつの間にか砂から舗装された道に変わっていて、外から家族であろう3人組がはしゃいでいる声が聞こえる。横についている窓から身を乗り出し前方を見ると王都はすぐそこだった。


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「せっかくのお祭りなんだ!にいちゃんも楽しめよ!」

馬車を降りる時に気前の良さそうな運転手がそう声をかけてくれた。暗い性格が顔に滲み出ていたのかなんだと思考を巡らせてから「ありがとうございます」

と一呼吸遅れて礼を言う。なんだが久しぶりにちゃんと会話をしたような気がする。

今王都は祭りをやっているらしい。出店が立ちどころに並んでいて、王城に近づくに連れ人が増えてくる。おそらく建国祭かなにかだろう。故郷ではあるが、なにぶん10歳になる前にここを離れたので詳しくは知らないのだ。友達もいた記憶はある。だが覚えているのは綺麗な赤髪と名前だけ。きっと彼女も同じような感じだろう。


…つまり"ぼっち"ということだ。この祭りの中で。周りは家族や恋人で溢れているというのに。こうも周りだけが活気付いていると疎外感を感じてならない。いっそ帰りたいとも思ってしまう足を前に進める。ここで帰れば師匠に何をされるかわからないから。いや、ちゃんと『母親に会うため』と心に留めておこう。師匠は心を読んでここへ飛んできてもおかしくないから。

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