不明1
〈大好きなあなたへ〉
元気ですか。
こんな形でお別れしてしまうのはとても悲しいです。
私はあなたと一緒にいれて幸せだったよ。すごく。
頭を撫でてもらったことなんてあなたと出会うまでは一度もなかったから、初めて撫でてくれた時は嬉しかったです。
二人でいろんなところに行ったね。いろんなものも食べたし。
あ、そうだ。私はあなたに料理を作って、それを褒められるのも嬉しかった。
あなたが美味しいと言ってくれた里芋の煮物はね、昔私がお母さんに何度も殴られながら教えてもらった大切な味付けのものだから、喜んでくれてよかった。痣と引き換えに覚えたんだ。あなたが気に入ってくれなかったら、耐えられなかった。
ある程度すると、お母さんは手が痛いと言って今度はテレビのリモコンで私を殴り続けるんだ。
そこまでして子供を殴る理由ってなんなんだろうね。
私のことを思っているからだそうです。
くたばれ。
私はどうしてもあの家から抜け出したくて、サンタさんにお願いしたこともあったんだよ。毎年サンタさんは私に千円をくれたのだけど、それもいつの間にかなくなって、本当はサンタさんなんてもう信じていなかったけれど、それしかないから。
サンタさんへ
わたしをサンタさんのところへいかせてください
サンタさんのこどもにしてください
お母さんがこわいです
サンタさんはわたしにひどいことをしないってしんじているので、サンタさんのこどもになりたいです
でも来なかったよ、結局ね。
だからお母さんを殺すことにしたんです。
お母さんの頭を潰すとき、私本当に気持ちを込めながらしたの。
贅沢言わないから、なるべく苦しんでゆっくり死んでください、って。
もうお母さんがいなくても大丈夫だよ。花嫁修業頑張ったからね。たくさん頑張ったから。もう大丈夫だよ。お母さんも安心して死んでいいよ。死ね。
そしてね、最後にね、聞いたの。
「産んだときは、幸せだった?」
もちろん何も言ってくれなかったけれど。
デキ婚した相手がどうしようもねえ屑、で、自分も同じくらい屑で。
子供も屑だもんね。親殺しなんて。
因果。
笑えないね。
生まれ変わったら、ちゃんとあなたのお嫁さんになりたいんだ。
その前に、幸せな子供に。
痛みなんて感じなくても美味しいご飯が作れるような、そんな人になりたい。
叶うかな。どうかな。
どうかあなたは幸せなままで。
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