第63話

「零!那由多くん!」


「あぁ、よかった!」




二人まとめてママにぎゅうぅっと包まれた。


暖かくて、自然と深いため息が出る。




「もー、零。いきなり走ってかないで」


「ごめんなさい」


「でも、那由多くんをよく見つけてくれた」




パパが私と那由多の頭を撫でて笑った。




「人混みでひとりぼっちになって、怖かっただろ。ごめんな」


「……だいじょうぶ」




そう言ったパパに、那由多はふるふると首を振った。




何かを必死に我慢してるみたいな顔が、私の目に焼き付いた。

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