第13話
不意に目が覚めるとそこは私のベッドで、那由多と一緒に寝かされてた。
部屋は電気も消されていて暗いけど、隣の部屋から細く漏れる光でよく見える。
那由多は気持ち良さそうに眠ってる。
私はそっとベッドを降りた。
引き戸の向こう側にあるリビングに行こうとして、わずかにあいた隙間に手を掛けた。
開けようとしたら声が聞こえて、私は隙間に顔をくっつけて向こう側を覗く。
「……そっか。寂しくなるなぁ」
パパはもう帰ってきてたみたい。
ちょっと残念そうな声が聞こえた。
「えぇ、まさかこんな時期にいきなり決まるなんて……」
那由多のママも帰ってたみたい。
ダイニングテーブルには那由多のパパもいて、大きな背中が見える。
ママが料理を運んできて席につきながら言った。
「でも、栄転なんでしょ?おめでとう」
「ありがとう。ただ、那由多のことを思うとなぁ」
「せっかく小学校に入学したばかりなのに、あの子が可哀想で……」
「そうねぇ。那由多くんは優しいから、嫌とか言わないだろうし」
「うちの零みたいに、もうちょっと我が儘でもいいよな」
我が儘じゃ、ないもん。
リビングにちょっと笑いが起こって、私はムッとして唇を突き出した。
でも、スパイごっこのつもりでこっそり覗き続ける。
「零も寂しがるだろうなぁ」
「泣くかもね。っていうか、絶対泣くわね……」
ドキン。
心臓が跳び跳ねた。
私が泣くこと?
ってなに?
「多分、那由多もだな」
「仕方ないわよ。ずっと一緒だったんだから……」
私はそれ以上聞いているのがとても怖くなって、またベッドに入ると布団をかぶった。
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