第4話

ご飯を食べたら今度はお絵かき。




これもいつしか決まってた習慣だった。




那由多は絵が本当にうまくて、犬と猫を描きわけられない私と違って、お花の種類の違いまでちゃんと描きわける。




私は白いカレンダーの裏紙に、色鉛筆を使って絵が描かれていくのをいつも見ていた。




それは、


自分で描くより断然楽しいから。




床にうつ伏せにふたりで並んで、横から手もとを覗き込んでた。




那由多は自然を描くのが好きみたいで、海とか空とか木とか鳥とか、そういうものをよく描いた。




その色使いは子どもの私の目から見ても、優しくて温かくて、那由多みたいにとっても綺麗だと思った。






那由多は女の子によく間違えられる。




それは、白い肌に大きな黒い目と薔薇色の唇、真っ黒でサラサラの髪の毛を持っていたから。




私は自分のことでもないのに、そんな那由多を自慢に思ってた。






私は生まれつき猫っ毛のくせっ毛で、伸ばすとすぐに絡まる自分の髪の毛が嫌いだった。


色もちょっと茶色いし、幼稚園ではうんち色とか言ってからかわれたりした。




でも、そんなときには




「きれいだよ!」




って、涙を溢しながら反論してくれる那由多がいて、私はからかった男の子たちを追いかけるのをやめて、那由多をぎゅっと抱き締めた。






那由多は自分のことでは反論しない。




女みたいってからかわれても、目に涙を溜めながら唇を噛んでただ耐える。






もちろん、那由多をいじめたやつは私が仕返しして泣かせてやるんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る