第5話

消えたっ!


私は早々に勝ちを確信していた。

ファイアウォールで逃げ道を塞ぎ、炎帝の効果で火力が大幅アップされたフレイムソードで斬りかかろうとしているのに相手のガストはただ突っ立っているだけ。

しかし、次の瞬間私のフレイムソードは空を斬った。


「え?」


そして私が戸惑っている間に最高火力の一撃が飛んできた。


「雷轟」


ズドォォン


「っあぶな!」


はあ、はあ、感覚で避けていなければ一発KOで即試合終了だった。

何あれ? 私の炎帝と同じくらいの火力じゃない。

あいつの適正魔法はあのメタスタシスとかいう転移の魔法じゃなかったの?


「まだまだ! メイキング、からのメタスタシス」


おんなじ手には引っかかんないってんの。


「次はくらわないわよ!土壁」


これで私の周りは安全。


「爆炎」


や、やばい。


バボォォン


「きゃぁぁぁぁ〜」


ここで私の記憶は途切れた。


「はっ、ここは?」


「医務室ですよ〜。 セイナさん初日から派手にやりましたねぇ。 ポーションも支給される量には限りがあるのでほどほどにしてくださいね〜。」


「す、すみません。」



くっそ、なんなのよあいつ。

ガストのやつあまりにも強すぎでしょ。

あれで学力検査も100点とか信じられないんだけど。

ああもうっ、ムカつく〜。



+ + + + + +



セイナとの決闘も無事終わったな。

流石に手加減してあるから怪我については大丈夫だろう。


でもこれでセイナとの仲が悪くなるのは確定したな〜。

メインヒロインだし仲良くしたかったんだけどな。

(いやっ、下心とかそういんじゃないからね。)


クラスに入るとみんなが好奇に満ちた目で俺を見てきた。


「なぁガスト、セイナには勝ったのか?」


クラスメイトのレイ・フォン・ジョーカーだ。レイはジョーカー子爵の息子で魔法学園に入る前は貴族学校でセイナと同級生だったはずだ。


「ああ、勝ったぞ。」


「良かったぁ。俺、貴族学校のときにあいつにボコボコにされてさあ『ジョーカー伯爵のところもたいしたことないのね。』って言われてチョー悔しかったんだ。親父の顔にドロ塗ったみたいでさ。俺が勝ったわけじゃないけどせいせいしたよ。勝ってくれてありがとう。」


「あ、ああ。」


セイナ、昔そんなことしてたのか。

ジョーカー伯爵のところもってことは他の貴族たちにも同じようなことしてたんだろうな。

根は悪いじゃないんだけど勝つとすぐ調子乗っちゃうところがあるからなぁ。


まあそれは置いといて、そろそろセイナが目覚める頃だと思うから一応お見舞みまいいと謝罪しゃざいにだけ行っておくか。

気絶させたわけだしな。



「失礼します。」


「あらいらっしゃい。セイナちゃんのお見舞い?」


「はい。」


「彼女なら向こうで休んでるわよ。」


保健室の先生は40代ぐらいの優しそうなおばさんだ。

まあほんとは昔、世界最強の回復魔法使いと言われてた人なんだけどね。


「ありがとうございます。」


「セイナ、お見舞いに来たぞ。あと気絶させちゃってすまんな。」


「気安く名前で呼ばないで。別にお見舞いになんてこなくていいから。あと今回は油断してたけど次は絶対勝つわ。覚えてなさい。」


うわー、怒ってる怒ってる。

態度には出してないけど体の中の魔力が荒れ狂ってるのが手に取るようにわかる。

こっちがちょっと手加減したのもあるんだろうな。

セイナはそういうのが大嫌いだからな。


「わかった。じゃあまたな。」


こういうときはあまり刺激しないに限る。

俺はさっさと退散することにした。



+ + + + + +



教室に戻って昼寝をしていると


「ちょっといいかい?」


ライトが声ををかけてきた。


「自己紹介で話したと思うが僕の名前はライト・セルスだ。よろしく頼む。」


「ああ、よろしく。 それで、どうしたんだ?」


まあ多分さっきの決闘のことだと思うが。


「さっきの決闘のことだが、あのメタスタシス?という技、あれはガスト君の適正魔法によるものか?」


「ああ、そうだぞ。」


やっぱりな。


「その適性魔法は『空間魔法』ではないだろうか?」


「そうだけど。」


「やはりか。知っているかもしれないがその空間魔法という魔法はとても貴重で実は100年に一度生まれてくるかこないかというぐらいに珍しいんだ。」


「ああ」


「それでなんだが、うちの父が魔法の研究をしていてな、空間魔法が調べられればとても喜ぶと思うんだが、少し魔力を貸してもらえないだろうか?」


やっぱりそのことか。 こいつの父親は宮廷魔法使いだ。

王国一の魔法好きとも言われていて、魔法に関することなら王国で彼の右に出るものはいない。


「それぐらいなら別にいいけど。 その代わりにそのお父さんに会わせてもらうことはできない?」


「いいぞ。 父の仕事が片付いたときにでも紹介しよう。」


「ありがとう。」


よっしゃ。これで宮廷魔法使いに会えるぞ。

原作知識を持っているとはいえ魔法のすべてを知っているわけではないからな。

宮廷魔法使いに会えるのはアツいぞ。


俺の魔法で彼の研究も捗ることだろう。

我ながらなかなかいい取引をしたんじゃないか?



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更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

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