第12話

見つめ合う先生と俺。




「佐久間?」


「……」




名前を呼ばれてもとっさに返事もできなかった。


悪いことをした訳でもないのに、イタズラが見つかった子供みたいな心境だ。




「またこんなとこで道草くってんのか?」




そんな心情を知るはずもない先生は、普通に話しかけてきた。




「せ、先生こそまた走ってんですか」




あ、やべ、ちょっと動揺が出た。


でもマイペースな先生は気付かない。




「ん?ああ」




緩慢な動きで頷いた。


今日はどうやら少しは俺と話してくれる気があるらしい。


立ち止まったまま、首にかけたタオルで汗を拭っている。




これはチャンスか?




「……先生」


「んあ?」


「なんで走ってるんすか?」




俺はついに、気になっていたことを口にした。

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