第5話

グレーのジャージの上下を着た身体は汗びっしょり。


首から下げたタオルは、絞ったらじょばじょば滴るだろうことがひと目でわかった。




なんだあの腹!


っていうか、体型!


ダルマじゃんか!




いや、それは大袈裟か?


でも太りすぎだろどう見ても。




「道草せんとさっさと帰れよ」




俺の心の声はもちろん聞こえていない先生は、やる気のない声で軽く注意した。




道草って、一回家帰ったし。


思わずそう返しそうになったけど、その前に俺は勢いよく立ち上がって道路へ飛び出した。




「ちょ、先生!」




先生は俺に一声掛けただけで、さっさと背中を向けて走り出していて、


俺は別に用も興味もないのに、つい追いかけていた。




はっと我に返ったけど、今更引っ込みもつかなくて、ただ道路に立つ。




そんな俺に先生は、背中を向けたまま片手を上げて振っただけだった。


もう振り返りもしない。




「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」




ちょっと笑える呼吸音が次第に小さくなっていく。


俺はなぜかその背中を見えなくなるまで見送っていた。

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