帰る者と帰らない者
辺りを見回すと、
いつの間にか影踏みをしたあの夕焼けの場所も何もかも無くなっていた。
真っ白な場所、遠くには鳥居が見える。
あの東西南北が書いてある鳥居。
「遥!!影踏み勝ったのか?!」
「私なんていつの間にか負けてたのに!!」
そう言いながら皆が私の元に駆け寄ってくる。
皆は私が勝ったから終わったと思っているの
だろうか。
ふと腕を見ると水色と青色のブレスレットを
つけていた。
あの子と同じ。
もしかして化け物たちを倒したら
こういう感じで何か手に入るのかな。
ゲームみたいに。
でも倒すっていう感じでも無さそうだけど...
「おい!!こっちなんか書いてあるぞ!!」
いつも人より真っ先に向かう海夏人が
鳥居の前でそう叫んだ。
向かうと古びた看板に
《帰りたいか?帰りたい者は鳥居をくぐれ》
そう書いてあった。
が、何だか怪しい。
「帰れるの?!」
「私帰る!!もうこんなとこ居たくないし!!」
そう言って真っ先に菜々は西と書かれた
鳥居をくぐる。
すると菜々の姿は消え、
西と書かれた鳥居も姿を消した。
「あ、ずるいぞ!!」
「俺も帰る!!じゃあな!!」
そう言って海夏人も鳥居をくぐり、
鳥居と共に消える。
「ごめん、俺も帰る」
「宿題が終わってないんだ」
そう言って陸をも鳥居をくぐって
共に消えてしまった。
残された私と南と書かれた鳥居。
私は帰るつもりはなかった。
それより後ろから謎の視線を感じる。
そう思い振り返ると辺りはまた、
草原へと姿を変えた。
あの鎌をもった鳥の化け物の時と
少し似ている草原。
途端、足に何かが絡みついた気配がした。
蛇かと思い、
足元を見ると居たのは小さな虎だった。
可愛いと思い小虎に手を伸ばすと
辺りが急に暗くなる。
何だか既視感を感じると思い、
振り返ると居たのは、とても大きな虎だった。
が、何だかぼやけている。
ゲームのバグのようにノイズが辺りに
散らばっていた。
「ライ」
ふと私の口が勝手に動き、
『ライ』と勝手に声を出した。
その瞬間なんだか懐かしいような、
でも切なそうな咆哮を虎が上げた。
ライ?
もしかしてこの虎の名前?
でもなんで忘れてたんだろう..。
多分きっと、大切な記憶だと思うんだけど...
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