第1篇: 遥かなる旅路(中編)
第1篇: 遥かなる
▢▢▢ 移動民族との出会い ▢▢▢
草原の向こうから、人影が近づいてくる。
「光輝、詩織、危険値は低め」タカミンが青く波打ちながら
緊張が走る空気の中、光輝はゆっくりと両手を上げた。
「タカミン、言葉は分かる?」
「任せて!」タカミンのホログラム体が青く
彼らの中から一人の青年が前に出る。
「何者だ?」
低く響く声に、タカミンが即座に翻訳を始める。その声は、不思議と周囲の空気に溶け込むように自然だった。
詩織が一歩前に出た。「私たちは、遠い地からの旅人です」
その声には、不思議な説得力があった。
▢▢▢ 集落での試練 ▢▢▢
夕暮れが近づく頃、一行は集落に辿り着いた。
かすかに残る日差しの下、炉の火が柔らかな光を投げかける。獣皮で作られた住まいの前では、子供たちが無邪気に駆け回り、老人たちが穏やかな笑みを浮かべて見守っていた。
「ねぇ、光輝」タカミンが小声で言う。「この集落のレイアウト、狩猟採集民族の典型的なパターンと一致するよ。しかも、道具の製作技術がすごく高度!」
「私たちはこの土地と共に生きる一族。」
青年カナメ《かなめ》の言葉には、誇りと覚悟が込められていた。
「だが、よそ者をそう簡単には信じられぬ。お前たちにも、試練を乗り越えてもらわねばならない」
「試練?」
光輝の問いに、カナメは遠くの山を指差した。
「あの山の頂に、
タカミンが急いでデータを表示する。「その山、かなり険しいよ。でも...何か強い波動を感知してる。羅針盤と似た周波数!」
その言葉に、詩織は光輝の表情を
「行くしかないね」
光輝の瞳に、決意の色が宿る。
▢▢▢
手にした星辰の羅針盤が、不思議な輝きを放っている。まるで天体の運行を映し出すかのような光の軌跡が、二人の進むべき道を指し示していた。
「気温18度、湿度72%...」タカミンが淡い青色の光を放ちながら周囲を分析していく。「天候は安定してるけど、この先は要注意だよ」
「光輝、ちょっと」
詩織の声に、二人の足が止まる。
地面には、ひときわ大きな足跡が刻まれていた。爪の跡は鋭く、この時代の野生の厳しさを物語っていた。
「熊、だろうか…」
「間違いないです」タカミンが足跡をスキャンしながら答える。「しかも、体重800kg以上の成獣。現代のヒグマとは比べものにならない大きさ」
言葉が途切れた瞬間、低い
振り返った先には、直立した巨大な
「気をつけて!」タカミンの声が震える。「通常の対応パターンが適用できません!」
「詩織!」
光輝は
その瞬間、羅針盤から放たれた光が、熊の目を捉えた。
獣は一瞬動きを止め、やがてゆっくりと身を
「今の...」
「うん、これが羅針盤の本当の力なのかもしれない」
二人の視線が交差する中、タカミンが青く明滅しながら
「不思議だね。この羅針盤、まるで意思を持ってるみたい。でも、その仮説を立証するためのデータが足りないよ...」
▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢
古の大地に隠された謎。
移動民族が守り続けてきた秘密。
そして、星辰の羅針盤が指し示す、意外な真実——。
次回、「遥かなる旅路(後編)」、光輝たちの前に、驚くべき運命の糸が
新たなる冒険の幕開けを、見逃すな!
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