こんにちは宇宙人
ボウガ
第1話
誰もしらないある年ある月、宇宙人が地球に来た。
「こんにちは、この人を探しています」
差し出したのは小さな紙きれ、しかしよく見ると何かの写真らしい。
「ああ、これは」
「何です?」
「プリクラです」
「私によく似ている、私この人に会いたい」
「……あははあははは!」
コンビニの店員は笑い出した。
「こんな時代に人の容姿を笑うのはよくありません、ですがあなた、それは化粧がちょっと、変じゃありませんか?」
客は怒り始める。
「私は!これでも我慢しているんです!」
「うわあああ!!」
客の顔が歪むと、店員がおびえてはしりだした。ごとり……監視カメラには、作られた頭部が転がり落ち、触手から延びる二つの眼玉だけが首をもたげて、ごつりと天井にぶつかる様子が映っていた。
また別の月。タクシーに乗っていると、宇宙人、地球人にとっては訪問客であるその人は、運転手に同じ質問をした。
「この人をしっていますか?」
「ん?どうかねえ、いやこの人は……これだけ加工がひどいとさ、お爺ちゃんには全部同じに見えるね、まるで宇宙人だね、がははは」
むっとにらみつけると、老人は頭を掻いた。
「すまない、すみませんね、どうも、なんだか余計なことばっかりいっちゃってね、昔からそういうたちで色々うまくいかなかったんだ」
「うまく、いかない?」
「そうだよ、昔はフィギュア原型の仕事をしてたんだが、こんな形でなんでも思ったこというんで、先輩に嫌われて、同業者にはぶられてね、心をやられたんだ」
「ココロ」
面白くおもったのか、運転手はそれからも様々な話をしてくれた。次第に運転手の話す地球の話を面白くなった宇宙人は、その人に対して愛着を覚えた。
「まさか、こんなことになるなんてな」
「仕事おわり、案内シロ」
「はいはい、わかってるよ、住む場所がないなんて、まったく、政治は何をやってるのかね?」
老人は若人を案内したつもりだった。部屋に一日止めるだけ。はじめからそのつもりだ。だが家に上げると、宇宙人は顔を隠した。
「どうした?」
「もうこれ以上いられない」
「そんな事はない、いやなら止めはしないが、気にすることはない、ホラ、鍵付きの部屋をやるよ、おっかあが出てった時のままさ」
「おっかあ?」
「そうだ、普通の生活をさせてやれなかった」
ベッドに小さなテーブル。寂しそうな、生活感があり、ホコリさえ積もっていなければたった今人がでていったような感じのする部屋だった。
やがて二人で食事をする。宇宙人が気にしているせいか、老人は顔をそむけたままだった。話がおちつくと、老人は彼の作ったフィギュアをみせてくれた。
「ちょっとした病でさ、顔のバランスがおかしいだろ?これがわかったころには、すでに心にがたがきていたんだ」
「ココロ……」
「人に受け入れられなきゃ、商売にならないからな、それでもかかあは認めてくれたが、彼女の心は苦しんだ」
「……私もこころ、いたい」
「ん?」
「私もはぐれもの、ととのっていない」
そういうと、ぼとん、と彼女の頭部が地面に落下した。その中から二対のかたつむりの角ににた触手がとびでると、その先に口と眼がひっついたそれは天井にびたんとひっついた。
「え、ええ……」
「オマエ、驚かないな」
「ああ、そりゃほら」
そういって、老人はフィギュアを見せた。
「アンバランスで、そっくりだ」
にっこりと笑う。
「なぜ笑う?」
「そりゃ、思い出すのさ、人間の心は弱いからさ、それでもかかあは出ていく最後まで、俺の心が映し出す情景、人を愛してくれた、周囲から何をいわれたって、それでいいじゃないか、それでさ」
若い宇宙人は老人の肩をなでた。老人は嗚咽まじりにないた。若い宇宙人は、覚悟を決めた。
「お前が死ぬまでここにいよう、私も居場所がない、左右の眼の長さが違うから、本当はいてはいけないガ、いるようでいない、秘密をまもればここにいる、おまえのかかあと同じだ」
こんにちは宇宙人 ボウガ @yumieimaru
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