反応
無事に進化を果たし、一皮むけて成長した僕。
「今日も相変わらず可愛いですねぇー。ふふふ、癒されます」
「きゅーっ」
だが、そんな僕の変化に自分の飼い主であるレーヴたんは一切気づいていなかった……うん。進化したと言っても、見た目上の変化は一切ないからね。
鏡を見て驚愕したもの。
マジで見た目が変わっていなかった。変わったような感覚はなかったけど、それでも少しくらいは変わったと思ったのだ。
でも、マジで一ミリも変わっていなかった。不変だった。
「きゅーっ」
だからこそ、変化を察してもらえなくともそりゃそうだよね。としかならない。
「うりゃうりゃうりゃ」
「きゅーっ」
僕は特に不満と思うこともなく、自分へとちょっかいかけてくるレーヴたんと戯れる。
「レーヴ様」
そんな中で、獣娘であるカンナが自分たちのいた部屋の中に入ってくる。
「そうずっとそこの蛇と戯れているような時間はありませんよ。貴方には多くの仕事が残っているのですから」
「うぅ……もうちょっとだけ休憩を貰ってもいいんじゃないですか?私、結構頑張っていますよ?」
「それは承知しておりますが、もう既にその休憩時間に突入してから三時間くらい経っているのです。戯れ過ぎです」
「えぇ!?もうそんなに時間経っているんですか!?……ちょっ、ごめんなさい。ノアちゃん。私はお仕事しなきゃいけないみたいです……」
ちっ。邪魔しやがって。
せっかく僕がレーヴたんと遊んでいたというのに……でも、レーヴたんが仕事に戻るというのであれば、僕が邪魔するわけにもいかないか。
「きゅーっ」
「あぁ……」
レーヴたんが再び、執務へと戻ったところで僕は彼女の元を離れ、カンナの元にまで移動する。
「それでは私はここで失礼します」
「うぅ……私からノアちゃんを奪い、自分は休憩ですか?」
「仕事です」
「……頑張ってください」
まだ幼い少女でありながら、仕事に追われる立場となっているレーヴたんはその言葉で撃沈され、大人しく執務作業に専念する。
「行きましょう」
そして、カンナは僕を連れ、レーヴたんのいる執務室から退室する。
「(んで?お前、進化したみたいだな)」
執務室から離れたところで、カンナが僕に向かって話しかけてくる。
「(えっ?わかるの?)」
「(ずっと一緒にいるからな。気づきもする)」
「(……あっ、そう)」
普通はずっと一緒にいるからこそ、些細な変化には気づけないんじゃないの?
「(それで?何に進化したんだ?)」
「(ベビースネーク)」
「(……知らないな)」
「(残念)」
まぁ、新種らしいからね。
ベビースネークは知らなくとも当然でしょう。
「(どんな成長を?)」
「(色々スキルが手に入ったよ。あぁ、そうそう。魔法素養ってスキルが手に入ったんだよね。これのおかげで魔法を使えるようになったんじゃない?)」
守護結界と治癒の舌は言葉通りのスキルだ。
守護結界は結界を張れるし、治癒の舌は舐めたものを回復させられる。
「(……ッ!魔法素養か。それは良いな。かなり良スキルだぞ)」
「(だよね)」
そんな中で、魔法素養に関しては魔法を覚える際、発動させる際にバフがかかる……純粋な才能を底上げする感じのスキルだった。
単体では役に立たないが、魔法を使うという行為全てに効果を及ぼすため、僕の努力次第でいくらでも価値を伸ばせる貴重なスキルだよね。
「(だからさ、僕は魔法を覚えたいんだよね。ちょっと魔法教えてくれない?)」
「(いいだろう。お前が強くなることは我々にとってもプラス。というか、我が国の中にある数少ない明るい光だからな。それで?この進化でランクはどうなった?)」
「(Eランク)」
「(……Eか。Eランクかぁ……)」
「(ちょっ!?露骨に残念がらないで!?僕はここからだからっ!)」
「(あぁ、期待している……期待させてくれ)」
「(もちろんだよっ!)」
僕はカンナの言葉に対して、力強く頷く。
僕はこんなところで終わらない。一国を支えられるくらい立派なドラゴンになるんだからね。
ちなみに、僕がカンナと会話出来ているのはカンナのスキルだ。
動物や魔物と会話できるようなスキルを持っているのだ───まぁ、動物も魔物も普通に会話出来るような知性を持っていないので、ほとんど役に立たない死にスキルだったらしいけど。
でも、これのおかげで今の僕はカンナとだけ、会話が出来る。
ありがたいよね。
「(それでは、魔法を教えるため、まずは図書室の方に行こうか。それだけの知性があれば、魔法も使えるだろう)」
「(りょーかい)」
唯一、会話を行えるカンナと共に、僕はこの王城にある図書室の方に向かっていった。
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