初進化

「ブーッ!」


「きゅーっ!」


 流れるようなスキルのコンボ。

 毒息で相手を麻痺させ、かじるで相手の首元をガブリ。

 これで殺す。

 平原で、大量の魔物の死骸を産みだした僕の必勝コンボである。


「……キー」


 自分へと突撃してきた一角兎を華麗に、慣れたコンボで倒して見せた僕は自分の強さに対して満足げに頷き、レベルを上げるためにまた別の魔物を倒すべく動き出そうとする。


 ───進化を行いますか?


 その瞬間だった、僕の頭の中に声が響いてきたのは。


「……きゅっ!?」

 

 いや、何の声!?

 いきなり響いてきた声に僕は動揺の声を上げる。


 ───進化を行いますか?


 鑑定!

 とりあえず、僕は聞こえてきた声そのものに対して鑑定をかける。

 

 ───進化を行いますか?


 だが、鑑定を発動しても何も発動させず、ただただ再び僕の頭の中に同じ言葉が繰り返されるだけだった。

 仕方ない。

 ここはもう……進化をする。そう決意するしかないのか?多分、さっきの一角兎を討伐したところでレベルが上昇。進化出来るようになったんだろう。おそらくね?


 ───進化先を示します。


 僕が進化するか。

 そう決めた瞬間、聞こえてくる声から発せられる言葉が変化する。


 ───ポイズンスネーク。

 ───ベビースネーク。

 ───以上の二つより、進化が可能です。


 進化先……選べるのか。自分で。

 うーん。とりあえず、進化出来る二つの分岐先を鑑定しますか。

 僕は二つの種族名に鑑定をかける。


《ポイズンスネーク》

《Eランクの魔物。ポイズンベビースネークが進化した姿。硬いうろこと麻痺性の毒を吐く魔物。Eランクの魔物の中でもかなり危険性の高い魔物であり、討伐には準備が求められる》


《ベビースネーク》

《Eランクの魔物。本来はあるはずのない、何の特性も持たぬ新種の魔物。何者にでもなれるその可能性の分岐。潜在能力の高さはかなり高いものの、現状における戦闘能力が低く、成長する前に殺されてしまう可能性の方が高い》


 おーん……おーん。

 何だ?これは。ベビースネークは。

 ただただポイズンが消えただけのベビースネークだぞ……何の特性も持たぬ、って何?ちょっとよくわからない。ただ、それでも潜在能力は高いのか……そっかぁ。

 今、強くなるならポイズンスネークだと思う。

 でも、将来性が高いのはベビースネークだろう。別に、竜の卵によって僕は進化に上限がないらしいから、別にポイズンスネークでも強くはなれると思う。

 ただ、それでも、ここまで夢のある特徴的なベビースネークを選ばない、ってのもないよなぁ。

 うん、決めた。


「(ベビースネークに進化で!)」


 ここはベビースネークに進化するのが良いだろう。

 どう進化が行われるのか。

 それもよくわかっていない中で、僕はとりあえず進化先を宣言する。


 ───承認、進化を開始します。


 おぉ!進化するぞ!

 僕はワクワクとした気持ちを持ち、進化が行われるのを待つ。

 

 ──進化が完了しました。


 えっ……?終わった……っ?

 えっ!?いや、はっ……ッ!?終わったん!?もう!?……いや、何か変わった?僕は何も変わった気がしないけど?


「(……えぇ?」)

 

 進化が完了した。

 その言葉に僕は首をかしげる。何も、僕は変わった感じを得られなかった。


《汝は何を望む》


 はへ?

 僕が一切変化を感じられない進化に困惑していた中で、また、別の声が頭の中に響いてくる。 

 それに対して、僕は呆ける。

 

 ───ハイスキル『守護結界』を獲得しました。

 ───スキル『魔法素養』『治癒の舌』を獲得しました。


 そんなことをしている間に、僕は何やらスキルを得たらしい。

 ほん。スキルを得たと。

 じゃあ、進化はちゃんとしているのか?いや、普通に鑑定で見ればいいか。

 僕は鑑定を発動し、自分自身のステータスを表示させる。


 ◆◆◆◆◆


 名前:ノア

 種族:ベビースネーク

 レベル:1/5

 ランク:E

 称号:『竜の卵』


 攻撃力:8

 防御力:5

 魔法力:3

 俊敏性:7


 固有スキル:

 『鑑定』

 

 ハイスキル:

 『守護結界』


 スキル:

 『魔法素養』『治癒の舌』『毒息』『かじる』『逃げ足』


 ◆◆◆◆◆


 あっ、ちゃんと強くなっている。

 ステータスを見た僕はその変化ぶりに驚く。

 しっかり、ステータス上の僕は強くなっていた。スキルもかなり増え、中々に見れるステータスとなっていた……いや、この攻撃力とかの数値の平均を知らないからまだ何とも言えないけど。


「きゅーっ!」


 初進化。

 なんかグダグダだった気がするものの、それでも、とりあえず僕は初進化の喜びの鳴き声を上げた……泣き声も前と同じなのね。

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