「次の告白者を指名します」

無機質な声が冷たく響きわたると、モニターが静かに数字を映し出した――


“8”


アイリ。

神秘的な雰囲気を漂わせる女性、アイリ(8)がゆっくりと立ち上がる。その仕草にはためらいもなければ、ほかの参加者が見せるような動揺もなかった。


「私の番みたいね」

落ち着いた声でそう言うと、アイリは視線を円卓の周囲へと巡らせる。


アイリの冷静な態度

「ねえ、あなた本当に緊張してないの?」

ミカ(3)が疑わしげな表情で尋ねる。


「緊張しないわけじゃない。でも……この場にいる理由は、わかっているから」

アイリは小さく微笑む。その笑顔は、どこか悟りを開いたかのような雰囲気を帯びている。


「妙なやつだな」

カズキ(5)がぼそりとつぶやく。「その態度が作り物じゃなければいいがな」


「作り物じゃないわ」

アイリは即座にそう返し、静かな視線をカズキに向けた。

「私が何をしてきたのか。それを話すだけよ」


アイリの告白

「私は……人の運命を操った」


円卓を取り巻く空気が、一瞬で凍りつくように張り詰める。


「運命を……操った、だと?」

レンジ(9)が低い声で問いかける。


「そう。私は占い師だったの。でも、その占いを利用して、意図的に人を不幸にしたことがあるの」

アイリの声はあくまでも落ち着いている。


「不幸に……?」

サクラ(2)が首をかしげる。「それって、具体的にどういうこと?」


「彼らが選ぶべき道を、嘘の占いで誤らせたのよ」

アイリの口調はあまりにも平静だ。


「占い師が、そんな大層な力を持つものか?」

ユウスケ(4)が怪訝そうに眉を寄せる。


「占いを信じる人にとっては、それこそ運命そのものよ」

アイリは静かな眼差しをユウスケに向けた。

「“この道を選べば幸せになれる”と信じれば、そう行動する人は少なくない」


「それを利用して、わざと不幸に導いたってわけか?」

レンジ(9)が問い詰めるように言葉を重ねる。


「ええ。それが私の罪……」


質問タイム開始

「質問タイムを開始します」

冷たく無機質な声が部屋を包むと、参加者たちが次々とアイリへ質問をぶつけ始める。


質問1:カズキ(5)

「操った相手は何人だ? 具体的に覚えてるのか?」


アイリは少し目を伏せ、考えるそぶりを見せたのち答える。

「10人……いや、もっとかもしれない。でも全員を正確に覚えてるわけじゃないわ。中には、もう取り返しのつかない結果になった人もいる」


質問2:サクラ(2)

「不幸にしちゃった人たちって、具体的にどんな目に遭ったの? 誰か死んじゃったりした?」


「……1人だけ」

アイリは表情を曇らせ、声を落とす。

「私の言葉を信じて、大事な取引を捨ててしまった。その結果、すべてを失って……最終的には自ら命を絶ったの」


質問3:ミカ(3)

「どうしてそんなことを? ただの嫌がらせとは思えない」


「違うわ」

アイリは即座に否定する。

「私には、彼らに本当の運命を教えたくない理由があった。でも、それが何だったのか……自分でもはっきり覚えていないの」


質問4:レンジ(9)

「占いを信じる人間がいるとわかっていて、なぜわざと不幸な道へ導いた? 本来なら幸せにしてもいいはずだろ」


「支配欲……それが答えかもしれないわ」

アイリは遠くを見るような視線で続ける。

「その瞬間だけは、自分が“神”にでもなったような気がしたの」


判断タイム

「質問タイム終了」

機械的な声が再び響くと、参加者たちはそれぞれの判断を固めにかかる。


判断1:カズキ(5)

「真実だ」

カズキは短く言い放つ。

「人を支配する快感に溺れる輩は多い。占いであれなんであれ、同じことだろう」


判断2:ユウスケ(4)

「嘘だと思う」

ユウスケは鋭い視線をアイリに向ける。

「運命を操るなんて、大げさすぎる話だ」


判断3:サクラ(2)

「真実……だと思う!」

サクラは小さく身をすくめながらもはっきりと答える。

「アイリさん、ちょっと怖い雰囲気があるし……嘘をついてるようには思えない」


判断4:レンジ(9)

「嘘に一票だな」

レンジは冷笑を浮かべる。

「本当にそんなことをしたなら、もっと悔悟の色を見せるはずだ」


結果発表

モニターに浮かび上がった文字は、

“真実”


部屋全体の空気が重みを増し、無機質な声が宣告を続ける。

「正解者には記憶をひとつ返還。不正解者には記憶をひとつ消去します」


記憶の報酬とペナルティ

正解者:カズキ、サクラ


カズキは「任務中に出会った少女との記憶」を取り戻し、黙って目を閉じた。

サクラは「幼少期に聞かされた恐ろしい予言」を思い出し、一瞬だけ顔をこわばらせるが、すぐに笑顔を作る。

不正解者:ユウスケ、レンジ


ユウスケは「……くそっ」と低く呟き、苦い表情を隠せない。

レンジは何も言わずに目を伏せ、無表情のまま座り続ける。

一方でアイリは、自分が“真実”と判定されたことに対して、まるで当たり前のように受け止めていた。

――彼女が占いで人を不幸へ導いた理由とは何だったのか。そんな疑問を抱かせながら、白い部屋にはさらに重苦しい沈黙が降りていた。


◇◇◇◇◇


「次の告白者を指名します」


無機質な声が響きわたり、モニターに浮かび上がる数字が部屋の空気を一気に重くする。


“9”

――レンジ。


彼は座ったまま微動だにせず、その瞳の奥にはわずかな苛立ちが宿っていた。数秒後、ようやくゆっくりと立ち上がる。


「……私の番か」


「まあまあ、楽しみにしてましたよ、レンジさん」

ケンタ(10)が軽い調子で口を開くが、レンジは応じない。ただ円卓をぐるりと見渡した。


「私は話すべきことを話す。それだけだ」

その言葉に漂う冷ややかさは、他の誰とも異なる。


「覚悟があるようで結構だな」

カズキ(5)が皮肉気味に呟く。


「覚悟などない。必要な手続きだ。それだけだ」

レンジは無表情のまま短く息を吐いた。


レンジの告白

「私は……誰も知らないところで命を奪ってきた」


室内の温度が一気に下がったように、全員が静まり返る。


「殺人か」

ユウスケ(4)が低く呟く。「その理由は?」


「単純なことだ。金のためだよ」

レンジの声は終始冷たい。

「私は“殺し屋”として生きてきた」


あまりにあっさりと罪を認める姿に、ケンタ(10)が目を丸くする。

「いやいや、普通は隠そうとするだろ? そんな簡単に言うか?」


「隠す必要がない。私はこの罪によってここにいるのだから」

レンジの声は少しの揺らぎもない。


「さっきのカズキと似た話ね……でも、ただの命令じゃないの?」

ミカ(3)が戸惑い混じりに口を挟む。


「ええ、違う。私は自分の意志で、その仕事を選んだ」

レンジは即座に答える。


「金のために、ね」

アイリ(8)が静かに言葉を継ぐ。「それだけが理由なの?」


「それだけだ」

レンジの目には迷いが感じられないが、その奥底に得体の知れない闇がうごめいているように見えた。


質問タイム開始

「質問タイムを開始します」


冷ややかな機械音とともに、参加者たちは一斉にレンジへ問いかけを始める。


質問1:ユウスケ(4)

「標的を殺すとき、どんな気持ちだった? 本当に何も感じなかったのか?」


「何も感じない。それが“仕事”の鉄則だ」

レンジの返答は一瞬の躊躇もない。


質問2:サクラ(2)

「でもさ、もしその標的が子供だったら? それでも何も感じないの?」


「子供は標的に含まれない」

レンジははっきりと切り捨てる。

「私の“ルール”で、それだけは許さなかった」


質問3:アイリ(8)

「自分で決めたルール? 誰かに仕込まれたわけじゃなく?」


「そうだ。誰かを殺すことで、別の誰かの命が救われる場合もある。だからこそ“境界線”が必要だった」

レンジは自らを納得させるかのように言った。


質問4:ケンタ(10)

「そのルール、ちゃんと守れてたのか? 誰かを“間違って”殺しちゃったことは?」


レンジの目がわずかに揺れる。その変化はほんの一瞬だったが、鋭い視線が集まる円卓では見逃されなかった。


「……守ったつもりだ」

そう答えるレンジの声には、かすかな迷いが滲む。


判断タイム

「質問タイム終了」


無機質な声が響き渡ると、参加者たちは自分なりの結論を固め始める。


判断1:ユウスケ(4)

「真実だと思う」

ユウスケは硬い表情を崩さずに言い切る。

「彼の言葉には迷いがない。実際そうだったんだろう」


判断2:サクラ(2)

「うーん……嘘かな! 何も感じないなんて、逆に不自然じゃない?」


判断3:ケンタ(10)

「俺も嘘に一票。レンジさん、ちょっとカッコつけすぎだろ」

ケンタがからかうような口調で言う。


判断4:アイリ(8)

「私は真実だと思う」

アイリは静かに頷き、レンジを見つめる。

「“人を殺す”という行為を、まるで習慣のように語ってる。その冷たさは嘘じゃない」


結果発表

モニターに表示された文字は、

“真実”


参加者たちの視線が一斉にレンジへ集まる。無機質な声が淡々と宣言する。


「正解者には記憶をひとつ返還。不正解者には記憶をひとつ消去します」


記憶の報酬とペナルティ

正解者:ユウスケ、アイリ


ユウスケは「不正を働いた同僚の死に関与した記憶」を取り戻し、険しい表情をさらに強める。

アイリは「不幸へ導いた相手が泣き叫ぶ場面」の記憶を思い出し、瞳に陰りを宿す。

不正解者:サクラ、ケンタ


サクラは頭を抱え、「また何かが……消えちゃったよぉ」と小声で嘆く。

ケンタは「ま、こんなもんだろ」と軽く流してみせるが、その目はどこか焦りの色を帯びていた。

レンジは“真実”と認定されながらも、相変わらず無表情のままだ。

――彼の“ルール”が守りたかったものは何だったのか。そこに隠された後悔や苦悩は、まだ本人すら掴みきれていないのかもしれない。部屋には一層の緊張感が漂い続けていた。


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