第5話 鬼灯 冬華

 姉さんから貰った水を飲みながら昼食が出来るのを静かに待つ。


「そろそろ出来そうですよーお二人共。冬華とうかはまだ来てませんか?」

「まだ来てないのじゃ。実験でもしとるんじゃないかの」

「呼びに行ってくるので少しお待ちください」

「はーいなのじゃ」


 そう言い姉さんが恐らくまた転移を使って目の前から消える。冬華さんは恐らく紹介すると言っていた人だろう。


「そういや姉さんのあれなんなの?転移ってやつ?やっぱり」

「うむ、あれは異能と言ってな。明日説明するんじゃがそういう不思議な能力を持った人がおるんじゃよこの世界には」

「オカルトって実在したんやねぇ」

「妖怪や怪異も全部では無いけどほぼ存在しとるからの」

「ノンフィクションだったんや、妖怪大図鑑とかって」


 知らんことがいっぱいやな人生。妖怪や怪異と戦うってなったら役立てるかなぁ僕。やっぱ肉盾?肉盾なんか?


 そんな事を思っていると知らない女の人の声が厨房の方から聞こえてくる。


 冬華さんやと思うんやけどここ僕以外に男居らんの?肩身狭ない?


「すみませんお二人共。蓮の説明をしてたら遅くなってしまいました」

「やっほーお兄さん。椿さんとシオンさんが認めてるなる私も異存はないよー。これからは家族として頑張ってこうねー」

「順応が早すぎひんか?」


 僕をお兄さんと呼んだ少女は銀色の髪をしていて、身長は椿と同じくらい、大体150前後かな?で、なんと言っても特徴的なんが目がぐるぐる目になっとる。


 何を言っとんの?って思われるかもしれんけどほんまにそう呼称するしかないくらいぐるぐるしとるんよ。共有したいわこの感情。


「あっ名乗るの忘れてた。私は鬼灯冬華だよん。よろしくねーお兄さん。私は科学方面全般を担当してるよー物作ったりハッキングしたり出来るんだよー」

「おぉよろしく冬華さん。物も作れてハッキングも出来るんは凄いな。てかなんで僕の呼称名お兄さんなん?」

「えだって私とお兄さんはこれから家族になるわけでしょ?」

「なんでそんなみんな受け入れるの早いん?」


 適応能力がカンストしてもてるんかな。普通もっと躊躇わん?僕初対面の人間よ?


「で私が今14歳でお兄さんが26歳らしいじゃん」

「冬華さん14なん?14から秘密結社で働くって……将来有望やな」

「でしょー?てか冬華でいいよお兄さん。まぁそんな訳で私のが年下だからお兄さんって呼ぼうと思って。シオンさんもそのノリでお姉ちゃんになったんでしょ?」

「そう言われるとぐぅの音もでんな」

「でしょでしょ。ってことでこれからよろしくねお兄さん」


 そう言葉を交わした後に昼食が出来たのか姉さんが大きい鍋を持ってくる。


「よーし出来ましたよ皆さん。今日は張り切って作ったんで美味しいと思いますよ?ささ、食べて食べて」


 蓋を開けると蒸気が部屋いっぱいに広がり美味しそうな匂いが部屋の中を満たしていく。


「じゃ皆さん行き渡ったってことで、いただきます」

「「「いただきます」」」


 それぞれが皿にすき焼きを注ぎ終わると姉さんが音頭を取り食べ始める。


 誰かと食卓を囲むなんて本当に久しぶりだし手料理を食べるのも久しぶりだ。


「んー♡最っ高なのじゃ♡」

「今日も美味ひいねシオンさん。さいこー」

「ふふ、まだまだありますからゆっくり食べてくださいね。……蓮はどうですか?口にあいましたか?」


 そう言って姉さんが僕の方を向き、ぎょっとしたような顔になる。


「れれれれ蓮!?だっ大丈夫ですか!?」

「ん?なにが?」

「なっ泣いてますけど!」

「んえ?」


 そう言われ頬に手をやって見ると確かに涙がこぼれていることに気がついた。


「あれ?なんでやろ。別に悲しくはないねんけど……」

「だっ大丈夫かの?」

「大丈夫?お兄さん」

「だっだだだ大丈夫ですか蓮!」

「そんな慌てんでくれ姉さん。ちょっと染みただけよ。久しぶりやからさ、こうやってみんなで食卓囲んで手料理を食べるのって。込み上げるものがこう……あってさ」


 ほんま申し訳ない、と言おうとして失敗する。気が付けば声も出せなくなるほどボロボロと涙が零れてしまっていた。


「ほんまに……なんとも、ないんよ。ただ幸せやなって……ちょっと思っちゃっただけやねん」


 ほんま今日は泣いてばっかで恥ずかしいわ。いつから僕こんなに泣き虫になってしまったんやろ。


「って……どしたの?」

「これからいっぱい!いっぱい色んなもの一緒に食べような蓮!」

「私たちが一緒だよお兄さんんんんんん!」

「お姉ちゃんが守りますからね蓮……!」

「あの……」


 考え事をしていると食事をしていたはずの3人に抱きしめられる。姉さんに正面から抱きしめられ、冬華に足にしがみつかれ、椿には背中から抱きしめられた。


 慰めようという気持ちを全員からひしひしと感じる。


 優しすぎんか?この人ら。秘密結社って悪ってイメージあってんけどそんな事ないんかな。偏見を持つのはやっぱり良くないよな。



「あの……皆さん?」

「どうしたんじゃ蓮」

「配置を変えながら僕を抱きしめ続けるのやめん?落ち着いちゃったせいで気恥ずかしくなってきたんやけど」

「そんな!私の抱擁が恥ずかしいって言うんですか!」

「背中からおっきい声出さんでくれ姉さん」


 耳キーンってなっちゃっとるから。イカれちゃうから鼓膜さんが。


「お兄さぁん私は味方だからねぇ……」

「そんでなんで冬華はずっと足なん?いじめられとるん?」

「私脚フェチだから……」

「離れて?」


 気のせいや思ってたけどやっぱ舐めたよな僕の足。頬赤らめてんちゃうぞマジで。ちょっと湿っとるやん僕の足。よく舐めれるな初対面の男の足。


「みんなあんま迷惑かけるんじゃないぞー」

「椿もなんやけど?もうなんか僕のこと椅子にしてご飯食べ始めてるやん」

「あかんかったか?」

「こんなことしたことないから緊張しちゃうんよ」


 ちょっやめて僕の胸に後頭部ぐりぐりして押し付けんといて、角刺さりそうで怖い。


 結局その後も椿に椅子にされ冬華に足を舐め回され姉さんに背中にしがみつかれ続けた。


 不思議な一日やなほんま。


────────────────────

キャラが勝手に動き始めてくれるから書くのが凄い楽しい回でした。


朝起きて♡や☆が増えてるとモチベが上がるんでいつも助かってます。


読みにくい所や表現が違う所があれば教えてください。


モチベに繋がるので感想や♡や星沢山ください。星100目指してます。

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