第2話 一冊目
一冊目。菅原孝標の娘「更級日記」。高校の頃、序文が授業で紹介された。いくつかの章は大学入試の問題集で読んだ。文庫を買って読んでのは大学に入ってからだったかな。物語を読みたいというのはこういうことなのかと、これほどまでの切望なのかと興味がわいた。一人の少女の「歴史」と言ってしまうのが、どうも嫌だった。彼女は文章に綴られた部分にのみ生きたわけではない。行間にのみ生きたわけではない。涙も喜びも挫折も恋もブチ切れもガッツポーズも書かれた所・書かれてない所以外にも彼女は経験したのだろう。私は、上杉優親の娘と言う名前ではない。上杉係長代理という役職名であってもそれでしか流布できない名前ではない。名前がある私の人生を日記に表しきれるはずはないのだが、日記として現れうる私の姿があるとするならば、愚痴ばかりは書くまい。
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