その苦しみは、やさしい陽の光に静かに包まれていた。

  • ★★★ Excellent!!!

この作品は、成長の過程で主人公が自らのセクシュアリティや同世代との関係に向き合い、葛藤する姿を描いています。文章は鋭く、それでいて正直に、孤独という感情の輪郭を浮き彫りにしています。

何度も心を開きかけては閉じ、またもがきながら扉を押し開こうとする――主人公のその繰り返しの動きは、ただ「自分を受け止めてくれる誰か」を探すためのものなのです。痛みの中にありながらも、この作品は人間という存在に対して、どこまでもやさしいまなざしを向け続けています。

幸いなことに、主人公の周囲にはやさしい人々がいます。彼らの存在は単なる慰めではなく、「痛みと向き合うことは、ただ必死に耐えることではなく、自分自身と和解していく過程でもある」ということを教えてくれます。そして何より、ふたりの間にある、静かで熱のこもった想いに心を打たれました。つらくても、泣きながらでも、それでも生きようとする人たちは、やっぱり美しくて、まぶしいのです。

この物語で描かれている愛は、単なる「同性を好きになること」ではありません。「彼女が女性だから好きなんじゃない。彼女だから好きなんだ」――そう言い切れるような、まっすぐで、純粋で、深く誠実な気持ちが物語全体に流れていて、その感情がこの作品にひとつの寛容な空間を与えています。

その空間は、傷ついたキャラクターたちをそっと包み込み、同時に、読み手の中にある痛みにもそっと寄り添ってくれます。この作品に宿るやさしさは、偽りのない、本物のやさしさでした。それが、何よりも美しかったです。

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