第2話

 雪だるま式に大きくなる、という言葉を人生で初めて実感した。初めは小さな雪のタネが、転がしていく内に雪を纏い大きくなること。表面積が増え、体積が複利的に大きくなるわけだ。


「じゃあ、みんな、あしたね!またねー!」


 教室には陽気な少女の声が飛んだ。


「このあと、サイゼ来る人いるぅ〜?」


 雪だるまを実感した、というのはどういうことか。


 遅すぎた、遅かった。初めの、タネのうちに潰さなかったから肥大化したと、そういうことである。


皆川みなかわくんは〜?」


 大きい、あまりにも大きい問題が、立ちはだかる。もはや、あの時謎の陰キャカミングアウトを入れたほうが救いようがあったのかもしれない。なんとかなるだろうと放置したのが良くなかった。


「そっかぁ、平瀬ひらせくんはそっちのグループのカラオケに——」


 少女の声が徐々に、いや、順番に近づいてくる。もうその姿は目の前の席まで来ていた。


「そっか、オッケー!引場ひきばくんも行けるってー!」


 そして少女は。


 こちらを一瞬見やり。


 スッと、体を翻した。


「……とりあえず、調布ちょうふ駅でいいかなー?」


 これである。


 順番に、容易な規則性を持って、一人に聞いたら、その後ろの人に聞くという、わかりやすいルールを持ったその行動は、不自然にも俺の前の席で途切れた。


 流石に、やばい。


 俺の求めた青春とはちょうど逆の方向に来てしまっている。お昼頃から、ずっとそうである。俺がヤリチンという悪評が広まり、特に対処もできないまま放置していたら、二日目にしてクラスメイトほぼ全員から既に距離を取られるという、絶望的な実績を達成してしまっていた。どうやってここまで……?


 いや、冷静になれ俺。頭を切り替えよう。今重要なのは雪玉をどう潰すかだ。雪だるま式に大きくなるのであれば、まだ小さいはずだ。まだ、対処可能で、言い換えるならば今対処しなければこの隔たりはもっと大きくなるであろう。


 というか。


「いやおい、いくのかよ」


「え?」


 目の前にいる引場である。


「放課後、みんなのファミレス付いてくのかよ」


「え、行かない方がいいかな……?」


「いや、そうじゃなくて、お前割と人見知りするタイプ〜とか大勢だと遠慮しちゃって話せない〜とか言ってたじゃんか」


 昨日、入学式の放課後、共に最寄りの駅まで歩いていた時に引場はそう言っていた。


「それはそうだけども……」


 疑問と困惑に満ちた顔をして俺の目を見る。


石蕗つわぶきが来てくれるから大丈夫、だと思って……たん、だけど……」


 グサ。


「え、来ない、の……?」


 グサッッッ!!!


 様子からして、俺が暗黙の了解的に全員から切り離され、ファミレスに誘われていないことにシンプルに気づいていないようだった。


「……誘われてない」


「えまじ……あっ、あ〜」


「察すな。この状況の原因は、少しお前にもあるんだからな」


「いや、あれ助けるのは無理でしょ」


「まぁ、無理だな……」


 流石にあれの責任をこいつに求めるのはお門違いではある。もう喋りかけるなオーラ出してる戸鹿としかに『利用できるかも』とかいう下衆なマインドで近づいた俺が悪い……のは、間違いない……。


 でもあんなにコテンパンにされるとはおもわないじゃん……。


「え、で……いか、ないの?払拭するには結構なチャンスだと思うよ?」


「いけ……ないだろ、これは。と言うかお前、行きたいの?」


「え、うん……実は僕、中学の頃友達が少なくてさ」


 少し物悲しく俯きながら話す引場に、は?が口から出そうになるのを抑える。その美貌で?かなり人気出そうだけどな……。


「ほんと、中学の頃はすごく仲良くしてくれたのが二、三人くらいしかいなくて……。ことあるごとに困ったんだよね」


 ……ほぉー。


 はいはいはい(笑)。まあはいはいはい(笑)。なるほど(笑)。まぁ一旦あえて何も言わないでおこうか(笑)。


「石蕗はわからないと思うけど、友達が少ないと大変なんだよ?」


「……」


 (笑)。


「普通にグループ作る系は地獄だし……」


 分かる。


「クラスメイトに文化祭の打ち上げの出席聞かれる時、内心『あ、来ないで欲しいんだろうな』なんてマイナスなメンタルになっちゃう自分も嫌いになるし……」


 分かる。妙に具体的だな。超分かる。


「一人だけだけれどもクラスに友達がいるという状況にあぐらをかいて交友関係広げずに生活してたらその友達が休んだ時居心地が悪いし……」


 分か……らないわ。分からないわ。分からない上にえなにそれ。シンプルなぼっちよりも残酷なエピソード……。


「周りは『あ、いつも一緒に昼休み過ごしてるけど今日相方休んじゃったから机に伏せて寝たふりしてるんだな』みたいな顔で見てきて……」


「おいやめろやめろやめやめ。悲しいわその話」


 セミぼっち(完全ぼっちでは無いものの友達が極めて少なく、ぼっち一歩手前)も辛いんだな……。


「それで、改めて、行かないの?行かなくても石蕗なら友達できるかな」


「正直、ここからの軌道修正は俺の力だと無理だし、行き……たいな」


 心の隙間から漏れ出る、『別になんだかんだめんどいし行かなくてもいいよね病』を必死に抑える。治さないといけない。


 しかし、こうなるとどうやって入っていけばいいものか。なんか呼んでないのに来たよあいつ……となるのだけは避けなくてはならない。だいぶ、苦しい。



「ねぇ!えーっと戸鹿さん!は、どうする?」


 悩んでいた俺の左側から先ほどの女子の声が聞こえてきた。


「ん……」


 俺は横目で左を見た。どうやら戸鹿が誘われているようだった。


「行かないです」


「うん、あ……さいですか……」


 戸鹿の覇気は強かった。あれだけ陽気だった少女の声量が尻すぼみになるのを見て、その厳かさになぜか俺も少し怯む。というか別に男とかヤリチンに当たりが強いわけじゃ無くて無差別なんですね。同級生なのに敬語て……。


「ちょ、ちょっといい?」


 声を出したのは俺の前の席の住人である。


「ん、ん!なにかな?」


 少女のポニーテールが揺れる。


「つ、石蕗くんも、一緒に……その……ファミレス、ついて行っていい?」


 引場少々怯えている?ような声色で、梯子をかけてくれた。お前……!(感涙)


「あ、あー」


 対して少女は、チラリとこちらを一瞥し、体をこちらに向けながら目線を上に向け、苦笑い。嫌がってませんかねこれ……。


「なるほどねぇ〜……。石蕗くんも、じゃあ、来るか!」


「あー、呼ばれてないのに悪いな。ご一緒させて頂ければ、その、助かる」


 なんだか少女の発言は諦めが入っているようにに感じられたが、もう気にしてはいられなかった。目を泳がせていた少女はスマホを取り出し、メモだろうか?画面をタプタプし始めた。


「フッ」


 真左から、鞄を整えている戸鹿げんきょうの嘲笑いが聞こえてイラっとしたが、もう特に気にしないことにする。


「よし!じゃあ、調布駅前のサイゼね!この後すぐ!」


 次の番組が始まりそうな言葉を残し、手をひらひらさせながら、少女は教室前方の女子集団の中へ去って行った。


「……いやー、よかったねぇ」


「……ひとつ、言っていいか?」


「えなに」


「やっぱり、持つべきものは友」


 神妙な面持ちで言い放った俺の後ろを、帰り支度を済ませた孤高な少女が通り去っていった。


⭐︎


 なんだ、これ。


 そう言いたくなってしまうのは、引場と引き剥がされてしまったからである。


 入学式の翌日に、新しいクラスメイト大勢で、駅前のファミレス。着いた時はなんだか交流が活発で盛り上がる感じにウキウキしていた。


 アニメなんかではあるあるな展開なのかもしれないが、現実は違う。みんな割と淡白で、正直こういうイベントが起こるクラスというのは少ないであろう。


 高校生らしいイベントといえば高校生らしいイベントなのではあるが、"クラスの皆んなと仲を深めたい"というような、十五歳になると少し恥ずかしさを感じ得る言動は避けたくなってしまうからだと思う。


 だからこのクラスは活発な方なのであろう。いやー良いこと良いこと。特に俺は交友関係を広げたいなと思っていたので、そういうのは非常に有難いところがある。



 ただ問題として——活発すぎた。


『せっかくなら、皆んなと仲良くなりたいよね!というわけで既に知り合ってる人とは離れて座る感じでお願いします!新しい家族を作るのだ!』


 という、皆も大勢の人と仲良くなりたいはずという決めつけによって提示された謎の席替え案と、それを受けたおちゃらけ男子達の『Fuuuuuuu!!』といった盛り上がりや、『ぽんぽんぽんぽんポォォォーーン!』といったそれ肯定の返答として合ってる?と突っ込みたくなるような騒ぎ声によって意図も容易く席替えが行われる流れになった。


 俺と引場は驚嘆を通り越して声も出ないまま引き攣り笑いをするしかなかったのを覚えている。


 そうして行われた席替えによって、このように知らないクラスメイトの男子一人と女子一人と三人で席に座っているわけである。正直言って非常に気まずい。


 目の前に座った少女は、綺麗な紫髪のロングで、ダウナーな印象を受ける。まつ毛が長く、整った顔立ちだが、その綺麗さは怒らせた時に怖いタイプのセレブなママさんを連想させる。席が交換された時、一瞬『うわ、ヤリチンかよ……』というような顔をしたのが印象的だった。


「えっと……とりあえず、自己紹介って感じで、する?」


 少女が切り出す。


「あ……はい、そうです、ね」


「……」


 なぜ敬語、とも突っ込まれないのがこの信頼のなさよ。


「……」


「フヒッ」


「……」


「え……と……」


「……」


 さてと。


 ……き、き、きき、ききき気まずうううううううういぃぃいいいいい!!!!


 むり!!!しぬ!!!!!助け!!!!!


 自分の向かい合う席に座っている少女は、自己紹介を提案して、できるだけ雰囲気を和やかにしようとしてくれているのがわかる。この、『なんだか微妙なメンツが揃ってしまった感』を薄めようとしてくれているのだろう。しかし、問題はコミュ障の俺と、俺の隣に座っているこの男である。


 俺の右からタプタプと、消音モードにしていないが故に発生するスマホのフリック入力音が聞こえる。



 いやTweeterすんな。


 Tweeterは所謂SNSの中でも、一人一人の呟きがメインで取り扱われるもので、どちらかというとオタク向けのもの。を。


 今やるなよ。


 常時ほんのりとニヤニヤしながら、目線を完全に下に向けている。この沈黙に耐えかねている俺たちを気に留めることなくずっとスマホ。ずっと小さくフヒ……フフ……なんて呟いている。まじなんでこの集まりに参加したんだよ……。

 

「——えーと……まぁ、私は、喜多見累音きたみかさね。趣味は……ゲーム、かな。あとアニメ鑑賞。んー……と、長野県出身で、好きな食べ物は……ダイコン?とか?渋いけど……。よろしく……」


 謎に固まった空気を破るため、少女がしぶしぶ自己紹介をする。おっとりしていて、抑揚のない、それでいて透き通った声であった。


 空気が空気なため、何を話せばいいのか分かりかねているようだった。


「へぇ」


 俺が、間髪入れず、相槌を打ち、口を開く。


「長野出身なのか。毎年毎年、うちは避暑の為に夏に松本行くから、なんか親しみ感じるな」


 ふ。


「あと軽井沢とか。白糸の滝とか、すごい水が澄んでて、あれは綺麗だよな」


 ふん。


 百点だ……百点。に書いてあったことをしっかりと答えられている。


 あの、『友達ができない人のための4ステップ』の第二十三項、アイスブレイクは土地から。日本人は、郷土に強い想いが結びつけられている場合が多い。地方であれば尚更。地元をチョチョイと突いてやれば、話を弾ませることができる、と。あの本には書いてあった。4ステップとか言いつつその中でも細分化されていて結局百項目くらいあったのには目を瞑ってやろうここで役に立ったから。


 完璧だ……。これで、友人二人目の足がかりが——。


「あー、私、根羽っていうめちゃめちゃド田舎で育ったから、えーと、なんていうか、あんまりそっち行かないんだよね……どっちかっていうと愛知……」


 喜多見きたみさんは微妙な顔を浮かべた……。


「あ、はい……」


「いやまぁ、私もごめん」


「……」


 なんというか、また一段、先ほどとは違った味の気まずさが生まれた。


 まぁいい。自分も、少し交流の意思を示せたことを誉めよう。数年前と同じように、拒絶しなかっただけ、黙り込まなかっただけマシなはずだ。


 冷静になってみたら、自分の経験から浅い表面的な長野を語ってしまったことに若干恥ずかしさが募ってくる気がするが、一旦気にしない。


「えーと、次、俺いいか?」


 喜多見さんは俺の隣にいるスマホタプタプ男を一瞥し、口を開かずに許諾の意思を見せる。


「俺は……石蕗千景つわぶきちかげです。趣味はランニング。生まれも育ちも東京だから、まぁ……観光案内とか、できる、かもな」


 ……なにそれ。


 自己紹介は前の人のフォーマットを真似するのが楽というあの本のアドバイスに従ったはいいものの、東京の後に『だから』を無意識につけてしまったせいでよくわからない着地点になってしまった。


 『自己紹介で趣味ランニングはなんか話広げづらいですよね。』『生まれも育ちも東京だからあなたよりも東京のことをよく知っていて案内ができるのですよ田舎者と言う意味が暗に受け取れる。』『あれ?フォーマット通りに行くなら好きな食べ物は?あれ?』というTweeterのクソリプみたいなのが頭の中に聞こえてくるが、取り敢えず捻り潰す。


「高校では沢山友達を作りたいと思っているから、出来れば仲良くしてほしい。よろしく」


 素直に行く。


「はいよろしく」


 なんだか流された感があるが、これが彼女のテンションなのかもな、と感じる。テンションが激しく上がったり下がったりしないこの雰囲気が、どこか心地よく、こう言う交友関係の形もあるのかもな、と思った。


 俺のヤリチンという評判に怯んだり嫌悪を示すこともなく、いい人なんだな、と思った。


「で……」


「少年、ちょっと。お前の番だぞ」


 隣にいる少年に自己紹介を促す。頬には少し肉がついていて、前髪重めの丸眼鏡、肌は綺麗なもののその病的な色白さが不気味な印象を与えている。


「フ、フフ……。まぁ、こほん」


 ようやく、スマホをしまい、眼鏡を一度クイッとかけ直し、口を開く。


「しょ、小生は尾田川拓和おたがわたくわでござる。フヒ……まぁ、うぬらのようなうつけ共とは違い、小生のような高尚な人間になれば、趣味など、話すでもないでござる……フプ。然らば、良きにはからえよ……フヒ」


「……」


「……」


 うっっっっわぁーーーーー。


 恐らく俺も喜多見さんも、同じことを思っているだろう。


 キャラ立ってんなーーーこいつ。


 もう、なんでもありだった。ザ・悪いオタクと言う感じ。思わず口角が下に引き攣るのを我慢できない。


 地獄の空気になりかけた瞬間、少女が話した。


「……『良きにはからえ』は、相手に任せる承認の意味の言葉だから、ちょっと違うよね」


「…フ……え?あ、その」


 ……え?あ、なんかそんな感じなんだ。


 喜多見さんの少々別ベクトルからのコメントだった。なんか同じこと思ってそうとか言って、すみません。


「それと、武士を意識するなら小生よりも拙者、とかそれがし、とかじゃない?」


 え?えええ?


「フ……フン……く、詳しいでござるな」


「まぁ、そう言うのちょっと興味あるから。『戦国トリップ』っていうゲームに最近ハマって……」


「……え?誠でござるか?」


 ん?なんか流れ変わったか?


「フ、フン……まあ所詮は、最近始めたライトユーザー……」


「まぁ、戦国トリップVIから始めたからライトユーザーなのかもだけど……なんていうか、過去作もやりたくなるくらいには奥深くて面白いよね、これ」


「……さ、左様でござるか。まぁ、拙者はIIから始めてIもしっかり履修した古参なわけであるが……」


 うわマウント……。もう、あの本の4ステップ全部破るような言動だこいつ……。ていうか何気に拙者に直すな恥ずかし。


「あのさ、尾田川おたがわくんは尾張おわりの守備配置ってどうしてる?」


「……フ、フン、そんなこともわからないでござるか……」


「いやまぁ、チャージ二倍で織田信長入れてくのが定石なんだろうけどさ、尾張徳川家が使えなくなるのが痛くて……」


 ま、まずい……。何とか食らいつかないと…。


「へ、へぇー。史実に基づいた面白そうなゲームだな」


「ん、んああ、ごめんね。そうそう。戦国時代の武将たちをタイムスリップした自分が各地に配置するゲームなんだけど……」


「ウヒ……ヒ……、まぁ、無理にチャージ二倍を狙うというよりも……クフフ、リーダーは豊臣秀吉にしてサブに織田信成という構成に決まってるでござる……フ、フシュ、そんなのもわからないでござるか?(笑)」


「んー、なるほど、いや秀吉の連撃でいけちゃうんだ……でも……」


「むしろ……信長は攻めで……であるからして……」


 あ、まずい。これ。


「——まぁ、喜多見殿の——ならば——こうして——」


 完全に置いてかれている……!その上、俺が少し話に入ろうとしてもこの尾田川が被せて入ってくる……!ていうか自己紹介ちゃんと聞いてたのかよ……!


「う、ウヒ——これは——幸村で——」


「——ええ、すご——詰んでると——」


 気づけば、俺は二人が楽しそうにラリーしているのを横目で見ることしか出来なくなっていた。同時に、とある危機を感じとる。やめろ……。


「————っああ!ごめんね」


 その紫色の髪を靡かせて、少女はこちらを向く。やめてくれ……!


「私たちしか、わからない話しちゃったね。ふふ、なんかごめん」


 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああああああ!!!!


 脳が、のうがのうが脳が破壊されるぅぅぅうううううう!


 その気遣い!やめて!『あ、ごめん、わかんなかったよね』は!!!!やめて!!!!無理に気を回されている感じというか!!俺がいなかったらもっとそこの話深く掘り下げて盛り上がってたみたいな雰囲気を感じるから!!苦しすぎる!!


 なーにが『この雰囲気が、どこか心地よく、こう言う交友関係の形もあるのかもな』だよ!!!『この少しミステリアスな雰囲気がデフォルトなんだろうな』じゃねえよ!!!


 "ふふふ、なんかごめん"ってちょっと、ちょっとぁぁあぁぁぁあああああぁぁぁぁああ!!!!!!


「いや全然。も、盛り上がってるようで何よりって……いうか……」


 できるのは去勢を張ることくらいだ。


 真隣をチラッと見る。


 


 尾田川は、こちらに勝ち誇ったような視線を眼鏡の隙間から覗かせていた。


 な、なぜ……。どうして、こう、なるの……。


 喜多見さんと尾田川と連絡先は交換できたが、勿論特に話しかける事も話しかけられる事もなく、トークルームを持たない、"友だち"という名称のついた二つのアイコンだけが残った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の席の孤高クール系美少女のせいで青春ができない 蟻依 乃梨 @arakou_u

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ