第3話 乙女座の加護を受けたうちの娘がプールの上を走っている
「おとーしゃま! おかーしゃま!」
王配であるディールが女王エレナと
ディールが上を向くと、窓から身を乗り出しそうになりながら手を振る我が子、スピカの姿がある。
「スキあり!」
上を向いた隙に愛妻から容赦なく手刀が飛んできたが、ディールは華麗に躱しながら反撃する。しかしエレナもそれを躱しつつ、スピカに手を振った。
夫婦は娘を溺愛し、ディールはスピカを天使だと言い続けている。まあ確かに母譲りの金髪碧眼、父譲りの整った顔立ちと手足の長さは見目麗しい。
加えてこの国の王女であれば、皆が天使だと褒め称えるだろう。
たとえその行動が天使とは似ても似つかぬとしても。
「とぉ!」
侍女の制止を軽々とふりきり、スピカは二階から両親に向かって飛び降りた。普通なら大変危険な行為だが、ディールが受け止める前にブン、と青白い膜のようなものが生まれてスピカを優しく包む。
エレナとディールは戦闘狂……ゴホン、いや、生まれながらにして乙女座の星の加護を持つ戦乙女とその守護神という二つ名を持つ。その強さはもしこの国と戦争などしようものなら、女王夫妻が先陣を切って二万の兵を易々と殺すだろうと言われるほど。その二人から生まれた娘、スピカにも同じ力があった。
尚、彼女の名前は乙女座の星にあやかり付けられたものである。
「見てて! スピカ、走るね!」
「ああ」
娘の言葉にエレナは今から何をする気かわかりニヤリとしたが、ディールは意味を知らず娘に
「!」
このままではスピカが溺れてしまうと慌てたディールが地面を蹴る。ひとっ飛びで先回りし、娘を止めようとしたが。
「シュキあり!」
「!」
なんと彼女は二本指を立て、父の目を正確に狙ってきた。完全にエレナと同じ動きだ。ディールは咄嗟にそれを避けたが、代わりに娘を止めることはできなかった。彼女はプールにそのまま突っ込む。
「スピカ!」
「キャハハハ!」
彼女は溺れなかった。青白い力を足の裏に纏い、水の上を走っている。
「しゅごいでしょ! おとーしゃま!」
「ああ! スピカは天才だ!」
笑い合う三人は、最強の加護を持った家族である。
尚、その加護の主と言われている乙女座の星だが、最近光が弱く元気がない。
どうやら「私は加護を与えてないのに! なんなのコイツら!」というツッコミをし過ぎて少々お疲れのようである。
「星座の愛し子」と言われている私との婚約を破棄されるなど正気ですの? わかりました。では鉄拳制裁で。 黒星★チーコ @krbsc-k
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