歩幅のあと
ぼくの知らないところで世界は動いていく
ぼくが目を離したすきに、恐るべき速度で変わっていく
朝が夜に変わるなんて朝飯前
ビルが建っては消えて
コンビニの種類もころころと変わっていく
季節限定の何某かは果たして発売されたのかもわからない
ただ広告だけが出されて、別のに貼りなおされていたようにも思う
写真に写して、取っておこうだなんて浅はかなたくらみも
カメラの起動を待っている間に打ち砕かれる
被写体はもうどこにもいなくなって、
三つ隣の駅まで移動していたりする
時間の進み方が合わないのであれば仕方のないことだ
同じ歩みでいることは、相応に難しいものだ
君の荷物をずっと持っていたかった
ただ気づけば君は返せという
君はすでに目的地についていて、ぼくを待っているかも定かではない
ぼくにできることは、君が待っていることを信じて突き進むことだけだ
ここらで瞬きをひとつ
シーンは次へ移っている
間違えて、早送りのボタンでも押してしまったのだろう
そう思ってリモコンを探すけれど、
荒れた部屋の中にあってはモノを探すなんて似つかわしくない
自分の生活に必要な部分だけを片付けて、散らかして
誰にも見られないのをいいことに、雑多な悪だくみを眠らせている
腐ったミカンがキッチンの足元に落ちていた
買った覚えのないミカンだった
気づけばなくなっていた
いつかのぼくが、わずらわしさを感じて片づけたのだろうか
腐りきって姿をなくしてしまったのだろうか
真相を知るものもまた、跡形もなく消え去った
便利な一面もあるのだ
移ろうような日々は、否応なしに未来へ連れて行ってくれる
ただ自分なりの歩幅で歩きたい日もあって
そういうときには疎ましく感じたりもする
君はいないようだった
二時間も遅れれば当然だ
ぼくはまたゆっくりと家に帰る
また深い夜が始まって、リモコンのありかを夢想しながらひた歩く
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