オーダーメイド

君に合わせるために形を変えて

あとにはいびつにゆがんだ自分だけが残った

色々と試してはみたけれど、

どうも誰も、何もしっくりこなくて、

思っていた以上に自分が心惹かれてしまっていたことに気づく


新しい何か、あるいは依り処を探して彷徨い歩くけれど、

枕を高くして寝られる日はやってこない

毛布やらタオルを丸めて、枕と偽って眠っている

君の好みで買った枕は使えないでいる

捨ててしまえばいいのに、暗いベンチに座らせている


そこかしこに感じる面影が邪魔で、

できるだけ黒いペンキで上書きするように生活している

フラッシュバックする光景があまりにも綺麗で、

はけで塗りたくる際に、躊躇いが生じる


対して、僕の存在はあまりにも希薄で、

飛び石を置かなければ足取りも追えない

隣にいる姿を想像できなくなった、想像してはならなくなった

落伍者にうまくやれるはずなどなかったろうに


身の程を知れ

恥を知れ


僕が君のものになることを企むような日々がどれだけ魅惑的だったか

ただそれはもう、三流雑誌の片隅にすら描かれなくなった

知らないところで、知らないことではしゃぐ姿を思いつくばかり

詩にも小説にもできなくて、メモ帳の走り書きばかりが増えていく

少しずつ、少しずつ取り出して、名前をつけて整理していく


いかにも愚かしいツラをして

誰しにも勝るようなツラをして

枠組みだけの箱を並べて

風が気にも止めずに通り過ぎていくのを止められず

中身のない形に還元して

フィルタを重ねがけして

箱に入れれば入れるほどに霧散していく気持ちの悪い感情に

どうにか意味を持たせようと躍起になっている


忘れることは、許されない

一度呪われた体は、そう易々と解毒されない

端が欠けた器に合う蓋があるかもわからないし、

ジグソーパズルのピースであるかも確かではない


だからもう少しだけ、この気持ちに向き合い続ける

抱いた感情は大切に

この僕もまた、紛れもなく僕なのだから

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