第二章 間違い探し


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「最初の遊びは、間違い探しだ」


男の声が、どこからともなく響いた。低く、抑揚のない声だった。


菜月は恐る恐るあたりを見回す。そこには誰もいないはずなのに、公園の雰囲気が異様だ。影が濃く、夕闇が急に深くなっている。


「菜月……」裕人が怯えた声を出した。「これ、ゲームなの?」

「分かんない。でも、とにかく逃げよう!」


そう言いかけた瞬間、目の前に『それ』は現れた。


――一人の女の子。いや、それは人形のようでもあり、顔には薄く歪んだ笑みが貼りついている。


「遊ぼう?」


女の子はゆっくりと歩み寄ると、周囲の景色が変わり始めた。菜月と裕人の周りには、無数の女の子そっくりの姿が立っている。


「間違い探しをしよう。三分以内に、本物の私を見つけなさい」


「えっ……?」菜月は息を呑む。全員が同じ顔、同じ服だ。まるで鏡の中の世界に迷い込んだようだった。


「早くしないと、次の遊びに進むよ」


カチッ――どこかで時計が鳴った。時間が始まる。



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