鎧10・デモンサーモン襲来ですわ!!
「はい、依頼の達成と買い取りですね、こちらですと……指輪が銀貨50枚ですので計銀貨51枚となりますが宜しいでしょうか」
「それでお願いしますわ」
依頼達成に対して指輪の価格が相当違いますわね……初級の依頼ですしこんなものかとは思いますけど。
報酬を受け取ってディドナとロウタが座っている座席へと戻る。
「おかえりなさい」
「おかえりッス」
二人が居る座席に私も座るとテーブルに報酬の銀貨を並べる。
「いい収入になったッスね」
「指輪が大きかったよね」
「では分けましょうか」
銀貨が51枚なので一人17枚、分けたそれを各々受けとる。
これで宿代がかなり稼げましたし当面は安心ですわ。
「じゃあ今日はこれで解散しましょう、もう日も暮れてきましたし」
「そうッスね」
「ではまた明日」
私達は席を立ちギルドを後にし別れる、私は大通りを歩いて『猫にマタタビ亭』へ。中に入るとカウンターでケットシーが毛繕いをしていたがこちらに気が付いた。
「あ、お帰りですニャ」
「只今ですわ」
と、そうですわ、今の内に1ヶ月分の宿代を支払っておきましょう。
「もし、お金が出来たので宿代を纏めて支払いたいのですけれど」
「はいですニャ、どれだけお支払い頂けますかニャ」
「1ヶ月分でお願いしますわ」
「では銀貨20枚頂戴しますニャ」
小袋から銀貨を20枚取り出しケットシーに手渡すと帳簿を開き記入する。
「はい、では引き続き今宿泊してる部屋を使って下さいニャ、部屋の鍵は期間中返却せず持ってて構わないけど紛失には気を付けて下さいニャ」
「分かりましたわ」
「ではこちら鍵ですニャ」
鍵を渡されると食事を取りに地下へと降りて行く、夕方も過ぎたせいか酒場は人も多く賑やかで騒がしい。空いてる席に座りメニューを開く、来た当初は酒場に入った瞬間奇異な目で見られてましたけど、今は皆慣れたのかジロジロ見てくることは無くなりましたわね。最も未だに怯えてる気配はありますけど。
さて何を食べましょうか、肉がいいですわね……と流し見ているとフライドチキンの文字が目に入る。……そういえば明日って鶏の謝肉祭でしたわね、皆で鶏肉を食べるという何か良く分からない祭でしたけど……ふむ、思い出したら食べたくなりましたわ、これにしましょうか。
フライドチキンを注文して暫くすると皿に盛られてやって来た。10本のフライドチキンと添えられたジャガイモの揚げ物が湯気を上げ香辛料の匂いが漂っている。フライドチキンの一本を手に取りかぶりつくとサクッとした衣の食感の後にジューシーな鶏の脂が滲み出てきた、肉も柔らかく骨から簡単に剥ぎ取られる。
「ん~美味しいですわ~」
脂もあっさりしていてクドくなく、香辛料のスパイシーさで後を引く。つけ添えのジャガイモの揚げ物もサクサクホクホクで、適度に振られた塩が味を引き締めている。
一本、また一本と骨に変わっていき、あっという間にジャガイモと共に胃の中に消えていった。
「ふ~、食べましたし部屋に行きますか」
料金を支払い部屋に戻ると入浴を済ませて就寝、お風呂に入った後も鎧脱げたままになってくれないかしら……
次の日、朝食後ギルドへ、今日はあまり天気が良くなく曇り空、雨降らなければいいですけど。冒険者ギルドに入ると……何やら騒々しいですわね、何事かしら。受付の方には人だかりが出来ている。
と、その人だかりの一番後ろに居たディドナとロウタがこちらに気が付いた。
「おはようッス、一大事ッスよ!!」
「何かあったんですの?朝から騒がしいですけど」
「デモンサーモンが大量発生したんですよ」
「デモンサーモン……?」
初めて聞いた名前ですわね……サーモンというからには、あの魚のサーモンですわよね……?
「え~っと、デモンサーモンっていうのは魔物の一種なんですけど、見た目はサーモンなんですが人くらい大きくて、しかも空を飛ぶんですよ」
魚なのに空飛びますのね……まあ魔物ですし空飛んでもおかしくないのかしら。
「まあそれだけならいいんですが……このデモンサーモン、鶏を食べるんですよ」
「鶏を?」
「これが家畜の鶏を襲うんで、農家にとって非常に厄介なんですけど、それが凄い増えてこの街に向かってるらしいんです」
「なもんで冒険者総出でデモンサーモンを駆除するって告知が出たッス」
成程、だからこんなに人が集まってますのね。そんな中、ギルドの職員が大声で話始める。
「え~冒険者の皆さん!!既にご存知と思いますがデモンサーモンが大量にこの街へ押し寄せています。このまま放っておくと家畜の鶏が全滅する恐れがありますので街の衛兵兵士だけでなく、冒険者ギルドも総員で対処にあたります!!尚、非常事態につき全員強制参加となります、また報酬については一人金貨一枚と致します。各員は今から西門外へ集合して下さい」
「デモンサーモンで金貨一枚とか太っ腹だな」
「よーしやってやろうぜ!!」
冒険者達が沸き立ち次々と外へ出て西門へ向かって行く。
「オイラ達も向かうッス!!」
「頑張りましょうね」
ディドナとロウタもヤル気満々のようですわ、私達も他の冒険者達に続いて西門へと移動を開始した。
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