第21話 爪楊枝ですんの?

ラーナリー郊外円形ダンジョン5階 ーステフー


 うう、うるさいぃ。なぁんか、うるさいぃぃ。

 ポンポンいっぱいぃぃ。まだ、寝てたいのに。

 んん?エミル、マヤお姉ちゃん、何してんノー?


 ナー!むらさきのプルプルしてるのがいル!ビリビリのプルプルだぁ!

 ねぇ、ステラお姉ちゃん。行ってイイ?遊んでイイ?いいノ!?ヤター!


「ああ、めんどくさいわね。核を傷付けちゃいけないなんて!いつもなら核を狙ってパーンと破裂させちゃうんだけど。」

「まぁ、プルプルに守られる核を狙って雷溶獣フルモスライムを安全に倒すなら飛び道具か魔法だよな。感電嫌だし、雨の時なんて特に。痺れたところ食われるのもな。こいつら結構獰猛だし。」

「焼いちゃおうかな。」

「はは、数がいればそれもいいけど、爆炎使徒エクスブランジェの場合強すぎて核まで溶けるぞ!」

「なにより、アルコの耐久度がもったいないのう。おっ!ステフや、起こしてしもうたかの?」

 じーちゃーん。ボクも混ぜテ!何の遊び?


「討伐じゃなくて捕獲だからなー。そこで俺の出番かな。」

「どうすんのよ、エミル。」

「まぁ見ててくれ!」

 アッ、シーシーだ。ご飯の後にエミルがくわえてルやつ。

「あんた、まさかそんな爪楊枝つまようじで!」

「よっと!」

 アハハハ!プルプルのヤツ、パーンでなった!どうやったの!おもしろーい!


「エミル!どうすんのよ!核、割れて粉々よ!」

 アー、刺さってル!シーシー、プルプルのお腹の石に投げたんだー!

「こいつらの核が光って見えるんだよね。俺。それで用事があるのはこれ。」

 ん?その投げたシーシーどうするノ?アッ投げた。またパーン!ボクもやりたーイ!


雷溶獣フルモスライムってのは、核が魔石化した電気石トルマリンだろ。石なんてもんは大きさが不ぞろいで当たり前さ。しかし、魔力圧力の関係で、溶獣自体のプルプルの体の大きさと帯電の量は一定に抑え込まれてる。ただ、核の石はその内側にまだフルーモをため込んでる。だから・・・」

 アー、綺麗な石ダー!さっきみたいに割れてナイ!おーゲットだー!


「この雷溶獣フルモスライムってやつは・・さっきの爪楊枝つまようじや針を帯電させてプルプルの被膜の内側に電気をぶち込むと。」

「パーンな訳ね。でもなんで?」

「容量オーバーじゃよ。エミルはスキルの核心で一匹目の雷溶獣フルモスライムから、その能力を自身の武器・・・つまりは今回は爪楊枝つまようじじゃが・・・それに移した。それで、そのフルーモの力を二匹目の体に打ち込んだ。電気石トルマリンはの外部からの刺激で電気を発するのじゃ。剣などの近接武器ならそのブヨブヨとした体の溶体スライムが核を刺激することを邪魔するが、電流は違う。もともとこやつ等の攻撃手段。体に満ちている物と同じじゃから核に刺激が直接届いて、震えて内部から放電する。そして内圧に耐えられなくなると核を残して・・・」

「パーンな訳ね。」


「核を傷つけずに獲るにはな。この方法が一番良い。傷つけずに刺激するからな。じつはこの雷溶獣フルモスライムのスキルも利用してのことじゃ。」

「スキル?」

溶獣スライムが破裂するのは、自爆。「最後の雨」というのじゃが自身を攻撃したものを道連れにする本能じゃ。じゃから普通に倒す時でも、魔法や飛び道具で始末するじゃろ。距離をとって。」

「そうなのよ。破裂の被害は結構シャレになんないから・・・。へぇ・・でもそんなスキルだったんだ。弱すぎて気にしてなかったけど。溶獣スライム系はドロップするものはないし核の石は粉々だし」

 ナー?エミル、その石はステラお姉ちゃんに渡すノ?・・・お姉ちゃんが笑った。じゃぁボクもやルー!


雷溶獣フルモスライムもな。死にたくはないから、本来は自爆しても核は残そうとする。ただ魔法や飛び道具が原因で自爆する時はすでに核が傷ついてからの自爆じゃ。雷魔法でやっつければいいと思うかもしれんが、雷溶獣フルモスライムの被膜は雷を弾くのが厄介じゃ。針のような突起物で中に注入してから放電せねばの。」

「んで!爪楊枝つまようじってワケ!」

 おー、エミル、ドヤ顔!

「それでは、抽出するかのぅ。ほれ!」

 じーちゃんの銀色の小皿だぁ!あっこから、ペタペタのシールが出るんだよネ。あっ光った!

雷溶獣フルモスライムLv.5か・・。5階の雷溶獣フルモスライムだから雷Lv.5ってことか。」

「エミル、剣は何本残っとる?」

「5本持ってきたから、4本だよ。じいちゃん。」

「じゃあ、今魂封印シールを貼ったのを基本としよう。後は段階的に増やしていくかのう。市場に出せるレベルの見当をつけたいからの。」

「じゃあ、また材料の核を集めましょ!」

 うん、マヤ!ボクもプルプルやっつけるぅー。


ー魂封印コレクションー

 雷溶獣フルモスライム

 コトの女神の眷属でも下級である溶獣スライムのうちで、雷をその身に宿す不定形の異形を持つ。アッケーノを生み出す波石(魔石)と電気石トルマリンが混じり合い核となり、生き物の攻撃的な殺意の想念がその核を溶体スライムで覆っていると言われます。きれいだからと、光沢のある紫黒の色に騙されて近寄ってはなりません。その殺意は雷のように貫くものを探しているのですから。あなたの身に雷響が通り過ぎた後、その身には紫の溶けた怨念スライムが覆い被さることでしょう。


 獲得権利及び効果(使用者の魔力量により制限あり)

・夕電泡雷 使用可能

 雷電に乗せた殺意は儚いものです。指向性のある攻撃放電及び武具等への雷属性の付与ができます。 

・紫黒の深淵 接続可能

 レベルに応じた雷溶獣フルモスライムを召喚、使役できます。最小分割単位はLv.1雷溶獣フルモスライムです。

・最後の雨 発動可能

 帯電した雷を一気の放出して周囲の敵を道連れにします。使用すると魂封印シールは剥離し消滅します。


 魂封印シールからのメッセージ

 「油断シテルと痺レチャウゼ!オレもオマエもナ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る