第48話

だけど桂はすぐにタレ目を鋭くして糸を睨む。




「コレは2代目の"姫"で、俺の親友の妻だ。手、出すんじゃねえ」



「・・・・ぐっ」



「・・・・っっ」




桂の殺気に、なんとか踏ん張る糸と晃。




「桂」




久し振りにこんな桂を見た。




「これがお前に構うのは"黒豹"だからだ。寂しい奴を放っておけないタチだからだ」



「っっ‼」




糸が桂から、あたしから目を逸らす。




「さっさと自分だけの"姫"を探せや」



「・・・そんなのいらねぇ‼俺はっっ、俺はっっ」




逸らした目をまたあたしに向けてくる糸。




その切ない視線に。




「糸」



「ハイネ‼俺はっっ」




ハイドを抱っこしたまま、糸に近付く。




「俺はお前しかっっ」



「あたしは真木八雲を愛してる。そしてこの子達はあたしの命で」




八千流とハイドを見る。



この子達のためなら、どんなことでもする。




「「まま」」




我が子達に微笑んでまた糸を見る。




「"黒豹"2代目の皆が大好きなの」




桂を見る。




あたしの大事な家族。



あたしはコレだけあれば十分なの。


他はいらない・・・・。




「だから、糸。あんたの気持ちには答えられない」



「ハイネ‼」



「糸。糸の相手は他に居る。糸だけを見て愛してくれる相手が居るの。あんたを待ってる」




にっこり微笑んで糸の頭を撫でる。



泣きそうな表情で糸は何も言わずその場を去る。




それに付いて行く晃。



何度もあたし達に頭を下げて。




「晃。頼むね」



「はい。大丈夫ですよ。ハイネさん」




任せてくださいと、言ってくれる。




「総長、おかえり・・・・総長‼??」



「どうしたんッスか!?泣いてんっスか!?」



「男が泣くんじゃないッスよ‼総長‼」



「失恋ッスね‼」



「泣くな‼」



「あ"ーーーーーーーーーーーーーーーー‼??」



「「「「ぎゃあああああああああああ‼」」」」





"黒豹"の車庫はいつも騒がしい。


それは変わらない。


糸の傷はきっと皆が癒してくれる。




「まま。いたい??」




ペタペタとハイドがあたしの顔を触ってくる。



痛い・・・か。



痛いのはきっと。




「んーん。痛くないよ。さっ"シャーウッド"に行こうか」



「「うん‼」」




元気良く答える我が子達。




糸と"黒豹"を引き合わせたのはあたしだ。



いつも1人で傷ついてる糸を放っておけなくて。




好かれてるのはわかってた。



けど、あたしは糸の気持ちには答えられない。




「チビ助」



「まま」




桂が微笑んで、八千流が桂の首にしがみついてあたしを呼ぶ。




スッと差し出された桂の手を握り、"シャーウッド"へ向かう。




「あんた痩せてない?」



「あ?今、逃亡者の役だからな」



「それにしても痩せすぎ。今日の夜ご飯は?」



「家で食べる」



「ん、わかった。今日は桂の好きなものにする」



「お!嬉しいねぇ」



「まま!やち、ハンバグ!」



「はいどは、たまごやき!」



「はいはい、二人とも手伝ってね」



「「あーい‼」」
















「総長ーーーーー‼失恋には酒だぜー‼」





あ"!?




あたしが車庫に殴り込む五秒前。

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