第13話 愚痴

「おはよう!」


 月曜日の朝、俺と高平と木山が話しているところに、小峯佳奈子が登校してきた。


「よう、小峯さん、川端とのデートはどうだった?」


 高平がいきなり聞いてきた。


「お、お前、何聞いてんだ……」


「あー、楽しかったよ。川端君には楽しんでもらえたのか分からないけど」


「いや、俺も楽しかった」


「そうなんだ。だったらお礼成功! ってわけね。よかった」


 小峯さんはそう言って席に座った。そこに本城真凛が来る。


「佳奈子、川端君とデートしたの?」


「え、そうだけど……真凛になんか関係ある?」


「関係って……だって……付き合ってる?」


「いや、友達だから」


「そうなんだ。佳奈子、あとで、ちょっといいかな」


「はあ?」


「怒らないでよ。少し話したいことがあるだけ」


「いいけどさ……」


 なんだろう、本城さん。


◇◇◇


 昼休み前に小峯さんからメッセージが届いた。


小峯『今日は空き教室で食べませんか?』


 やっぱりネットではキャラ違う。俺たちは了承し、昼休みに空き教室に来ていた。高平の幼馴染みの宮内早紀さんも一緒だ。


「教室じゃ愚痴言えないから、ここにしちゃった。みんなごめん」


 小峯さんが言う。


「いいよ、佳奈子ちゃん、どうしたの?」


「早紀ちゃんはうちのクラスの本城真凛って知ってる?」


「私に話しかけてきた派手目な子でしょ? 男子に人気な子だよね」


「そうそう。実は元親友なんだ」


「元って……」


「まあ喧嘩しちゃっててね。それで、私が川端君とデートしたって聞いて文句付けてきたんだよ」


 え、やっぱり文句だったのか。


「どういうこと?」


「佳奈子ならもっと格好いい人狙えるとか言い出して」


 あー、そういう……それには俺も反論できないな。


「なにそれ」


「でしょ、私ならともかく川端君の悪口言い出すから許せなくて……」


 あ、やっぱり悪口言われてたんだ。


「思わず『川端君は外見であんたより私を選んだんだからね!』って言ってやったよ」


 なんだ、それ……


「外見でって……どういうこと?」


「いや、真凛は今の自分の外見に自信持ってるから、鼻っ柱折っとこうと思って。でも、結構有効だったよ。『川端君だって私が誘えば落ちるから』って言い出して」


「おいおい……」


 どういう展開だよ。


「なので、そのうち真凛が川端君を誘惑に来るかも」


「やめてくれよ」


「ま、誘いに乗るかは川端君の自由だけど」


「そんなのに乗らないって小峯さんは知ってるだろ」


「まあそうだけど」


「あー、やっぱり川端君は一途なんだ」


 宮内さんが言う。


「そうなんだよ、こいつは」


 高平まで同意し出す。


「川端君は三つ編み眼鏡が好きなだけだから」


 小峯さんが言った。


「まあそうだけどさ」


「もし……もし、よ。真凛が三つ編み眼鏡で迫ってきたらどうする?」


 予想外のことを小峯さんが俺に言ってきた。俺は思わず言葉に詰まる。


「あ、こいつ黙ってるし」

「川端、お前……」


 高平と木山があきれ顔で言う。


「……いや、俺は小峯さん一筋だし」


「なんか、ちょっと信用できない感じになってきたなあ」


 宮内さんがジト目で俺を見た。


「でしょ? まあ、わかってたけどね」


 小峯さんが言った。


「誤解だよ!」


「はいはい、別にいいんだよ。私は文学少女じゃ無いし」


「いや、ほんとに……俺は小峯さんだけだから」


「わかったから」


 それを聞いた宮内さんが驚き顔で言う。


「え、そこまで言っちゃうなんて、もしかしてもう告白してる?」


「あー……そうね。この間のデートでちょっと……」


「そうなんだ。それで? 付き合うことにしたの?」


「いや、断ったけど」


「え!? そうなんだ……でも、なんか気まずい感じとか無くない?」


「まあ、これからも友達でって感じだし」


「そっかあ……でも、川端君はあきらめてないんだね」


「もちろん。まだまだこれからだし」


「うん、いいね! 私は応援してるよ」


「あ、ありがとう」


「おう、おれもだ」

「もちろん、俺も」


 高平と木山も俺に言う。


「なんか、私だけ敵みたいじゃない?」


 小峯さんが言う。


「敵って言うかターゲット?」


「ターゲットって……そんなこと言うならこっちも反撃しようかな。早紀ちゃんはどうなってるのかなあって」


「どうって?」


「そりゃ、高平君よ」


「雄大? 別に……ただの幼馴染みなんだけど」


「そうだぞ、変なこと言うなよ」


 高平が小峯さんをにらむ。


「早紀ちゃんは彼氏とか居ないんだよね?」


「居ないけどさ……」


「じゃあ好きな人は?」


「好きな人は……居るけど」


「え、居るんだ」


 高平がショックを受けた顔をしている。そりゃそうか。わざわざ宮内さんに昼休みに来てもらってるぐらいだし、こいつは気があるよな。


「そりゃ、居るよ」


「そ、そうか……」


「か、佳奈子ちゃん、連絡先交換してなかったね」


「あ、そうだね」


「しておこうか。いろいろ相談したいこともあるし」


「だね」


 なぜか女子達は急に連絡先を交換した。



―――

※本日より1日二回更新とします

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