第32話 勝てない

 王国の先遣部隊が到着した。彼ら曰く「我々の仲間は龍族である。貴官らに勝ち目はない。降伏せよ。

「代表は処刑、残りは奴隷としての生命を保障する」


との事だ。そんな仲間が居るなら最初から世界征服できそうなのもなのに。


 こちらの返事は当然拒否だ。向こうがまだ攻撃してこない以上こちらから攻撃もせずに交渉しているが向こうは自分達に負ける事がないと思っているのか内容は変えない。


 その間出来るだけ非戦闘員は離れて行くように逃がした。そして数日後凄く嫌な気配が近くに来た。


 その存在が近付くと皆立って居られない。敵も味方もしゃがみこんだ。気配はさらに近付くと誰もが震えて話すことも出来ない。これは人間では勝負にならないと気付いた。


近付いてきた大きな生き物が上空から声をかけて来た。

「そこのお前は何者だ?」

「俺ですか?」

「それ以外に話せそうな人はいないだろ」

「そうみたいですね」

「なぜ普通に会話できる?」

「お言葉ですが普通では有りませんよ。怖いです。許されるなら逃げ出したいほど。でもここには私の大切な仲間が居ます。その人たちを置いて逃げる訳にもいかないので」


「仲間と言うたか?近くには動物や亜人と呼ばれる者も居るが」

「共に生きてる仲間です」

「何か聞き話と違うな。ある国の王に魔獣や動物や亜人を殺し過ぎる国が出来このままでは龍も退治に来ると言われ協力して倒そうと来たのだが」

「と、こちら側に言われると言う事は信用はしてなかったのですか?」

「一方の話だけでは信じないからな。見た感じそんな雰囲気もないし。基本龍も生き物であるから敵対した者、食うためには攻撃することは有るからな」

「私達もです。一方的に狩ったりすると生態系が崩れるかもしれないので、生き物も自然も必要以上にとったりはしてませんし、敵対しない生き物とは仲良くしたいと思ってます」


 「見てるとその様だな。動物達も亜人たちも貴殿を守ろうとしている。強制的でない事は見たらわかる。そうなるとだ、話が違うと言いたくなるな。この国は自然や生き物を殺すどころか大切にしている。これは騙されたと言う事だな。我を騙すとどうなるかあの国は知りたいらしい」


 「お待ちください。私達が巧妙に騙しているのかもしれません。そこで提案なのですがもしよかったら期間限定でいいのでここの近くに住んでみませんか?近くで私たちの行動を見てもらえたら多分どちらが悪いかわかると思います」


 「なるほどな。……で本音は?」

「ここに居てくれている間はどこの国も手出しが出来なくなること。それと折角伝説の生き物に会えたのにすぐに離れてしまうのは寂しいから。出来たら仲良くなりたいなとおもってます」


「お前は変なやつだな?でも悪い気はしない。今日から我々は知り合いだ。しかしこの地に住む者もこんな変な代表じゃ大変だろう?」

と言うと近くでしゃがんでいた者たちも笑顔になった。

「では我から頼むことにしよう。この地に少しの間世話になる。よろしくな」



こうして期間限定の住民が増えた。


気が付くと王国軍は最高速で逃げ出していた……。


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