第十五話:新生聖騎士団の初陣! 魔物討伐に挑むオカマ剣士

 アルマルスから北へ向かう街道を、新生・聖騎士団が進軍していた。馬上の若い騎士たちは、まだ緊張の面持ちだが、それぞれの顔には確かな決意が宿っている。そして、その隊列の中心で、ひときわ目を引く姿があった。


 筋骨隆々の体躯を誇りながらも優雅さを兼ね備えたオカマ剣士ジュン。深紅と紫を基調にしたきらびやかな衣装が風に揺れ、手にしたエペ風の剣が太陽の光を受けてきらめく。ジュンの隣には、若き騎士ライゼルが馬を並べていた。


「ジュンさん、本当に私たちがやれるでしょうか…。腐敗を断ち切ったばかりで、まだ団の連携も不十分なのに…」

 ライゼルの声には不安が混じる。だが、ジュンは軽く笑って彼を見やる。


「やれるわよ。腐った騎士団を一掃したあんたたちの覚悟があれば、魔物なんて怖くないわ。オカマ剣士ジュンが一緒にいるんだから、安心してなさい。」

 ジュンはそう言いながら、馬上で軽く剣を抜いてみせる。その動きは滑らかで洗練されており、剣先が風を切る音だけで一同の士気を高めた。


 行軍を続けること数時間、近隣の村からの使者が駆け寄ってくる。

「騎士団の皆様! ありがとうございます! 村の外れの森に大きな魔物が現れ、家畜や作物を荒らしており、村人たちは避難を余儀なくされています!」

 息を切らせながらも、その言葉には救援への期待が込められている。


「わかったわ、まずはその魔物を叩いて安全を確保しましょう。」

 ジュンは使者に優しく微笑みかけながら指示を出す。

「ライゼル、隊を二つに分けて。片方は村の安全を確認して守備につきなさい。もう片方はあたしが率いるわ。魔物退治に向かうわよ。」


「承知しました!」

 ライゼルは即座に隊を分け、指揮を執り始める。ジュンも自ら剣を握り、魔物討伐の部隊を引き連れて森へ向かった。


 森の中は薄暗く、不穏な空気が漂っている。木々の合間から聞こえる低いうなり声に、騎士たちの緊張が高まる。だが、ジュンは悠然と歩を進め、筋肉質な背中を見せながら部下たちを安心させる。

「ビビらないでちょうだい。魔物なんて、あたしたち全員で叩けば倒れるわ。」


 その時、森の奥から巨大な影が現れた。全身を黒い鱗で覆った獰猛な怪物が、鋭い爪と牙をむき出しにしながら姿を現す。その大きさは馬の倍以上もあり、何かを狩るために血走った目でジュンたちを睨みつける。


「これは…ドラゴノイド!?」

 ライゼルが驚愕の声を上げる。それは、通常の魔物よりも遥かに強力な存在だった。若い騎士たちは一瞬怯むが、ジュンは一歩も引かない。


「ふふっ、いいじゃない。ちょっと骨のある相手のほうが、やりがいがあるってものよ。」

 ジュンは剣を構え、その逞しい体躯を低く落として戦闘態勢に入る。


 ドラゴノイドが咆哮を上げ、鋭い爪で突進してくる。ジュンは軽やかにステップを踏み、間一髪でかわしながら剣を一閃。硬い鱗を弾く音が響き、怪物が振り返ると、ジュンはすでに背後へ回り込んでいた。


「みんな、あたしが隙を作るから、一斉攻撃よ!」

 ジュンの指示を受けた若い騎士たちは、一斉に剣と槍を構えて突撃を開始する。怪物は怒り狂い、暴れるたびに木々がなぎ倒されるが、ジュンが先陣を切って巧みに動きを封じていた。


 剣の一撃で怪物の後脚を負傷させ、さらに槍がその隙間を狙って突き刺さる。若い騎士たちは恐怖を振り払うように声を上げながら攻撃を続けた。そして、ついにジュンの鋭い一撃が怪物の喉元を切り裂き、その巨体が地面に崩れ落ちる。


「ふぅ、やったわね。」

 剣を鞘に収めたジュンが振り返ると、騎士たちは歓声を上げ、互いに労いの言葉を交わしている。ライゼルも駆け寄り、目を輝かせて言った。

「ジュンさん、あなたがいてくれて本当に良かった…! これなら、僕たちもきっと変われます!」


「当然でしょ? オカマ剣士ジュンがいれば、怖いものなしよ。さ、村に戻って報告しましょう。」

 ジュンは微笑みながら手を振り、騎士たちを率いて森を後にする。


 こうして、新生・聖騎士団は初陣で見事な勝利を収めた。若い騎士たちが自信を深め、団結を強める中、ジュンは胸の内で次なる試練に備える。まだ騎士団の再編は始まったばかり。清廉なる剣士の道は、これからも続いていく。


 第十五話、ここまで。

 次回、村人たちとの交流を通じて明らかになる新たな危機! 新生聖騎士団は、さらなる困難に立ち向かう。乞うご期待!


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