(12月10日)

◇◆◇



『そういえば、


 ゲームしようって言ってたんだった』





「そうだったね


 凛、強いから覚悟してね?」





――――――――――――――――――――…





凛はこの日から、彼に連絡するのをやめた。


連絡をしなくなってから10日ほど経ってから、連絡がきたときに


一度だけ さよならを告げたことを除いては。




12月10日 は、ふたりの記念日になった。





凛を駅まで送ったとき、空は晴れているのに 少し小雨が降っていた。




空が夕日に紅く染まって、水たまりが 空の色を映していた。




水面が雨で弾けて、ストローでつついたように揺れている。





凛と一緒に頼んだクランベリーソーダのように、甘酸っぱくて懐かしいような気持ちになる。




僕は長い間、心の隙間から何を覗いていたのだろう。



臆病で何もできなかったあの頃の自分。



心の奥底でずっともがいていた自分の手は、ようやく自分自身に追いついて何かを掴んだ気がする。




『凛、また明日ね』




「ひょーちゃん、大好きだよ」




夕日の中に溶け込むようにきらきらした笑顔だった。





ひとつだけ 浮かび上がってきた想いがあったけれど、


僕の深いところに眠らせてしまうね。



僕に、大切なひとができたから。



ごめんね。



この思いは永遠だけど、今を大切にしなければいけないから。

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