(今だけは)

店を出たとき、凛ちゃんは立ち止まり

ほろりと涙を零した。






「ひょーちゃん、



 ひょーちゃん……



 凛、どうしたらいいか


 わからないよ……」




『凛ちゃん……』





人目につかないところで、僕は凛ちゃんを抱きしめた。






『今だけは 


  こうさせてよ』





凛ちゃんの痛みを消してあげたい。

それが本心なのは確かだけど、自分自身 こうしないといけないような気がした。


凛ちゃんを抱きしめたら、心のどこかにできた隙間が埋まっていくようだった。



なのに何故だろう。


あの雪がしんしんと降る夜のことを思い出すのは。

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