(仕草)

「結局、……私が悪かったのかな……」



『凛ちゃん……』



凛ちゃんの表情、声のトーン、指の動きを目にしながら心の声が伝わってくる。




「ごめんね、氷馬さん 


 しんみりさせちゃって」





『ううん、こういう時は 話しちゃったほうがいいよ?


 心のデトックスしなきゃ?』



「なんだろう、


 氷馬さんと話してると 


 やっぱり安心する」



『そうかな? 


 それなら良かったけど』




机で向かい合って話していたんだけど、いつのまにか二人で机に頬杖ついていて距離が近くなっていた。





「氷馬さんて……  


 近くで見ると なんか幼く見えるね」



『よく下にみられるからね


 良くも悪くも』





「なんか、氷馬さん


 ってより ” ひょーちゃん ” って感じ』



『ひょーちゃん?』



「うん、


 これからは ひょーちゃん って呼ぶね?」



『人のこと 


 よくイジってくるよねー』



そういう凛ちゃんも子供みたいな顔をしている。



それと、ひょーちゃんと呼ばれるのは、悪くない。





「ひょーちゃんからもらったタンブラー、


 すっごく使いやすいの。


 ひょーちゃんもまだ使ってる?


 ひょーちゃん」





『まだ使ってくれてたんだ? 


 よかった


 僕もまだ使ってるよ? 同じやつ


 ってか、無駄にひょーちゃんって言いたいだけ?


 ふふふっ」




陰りを見せていた表情に灯りが見えてきたけど、きっと内心 不安な気持ちが胸を締め付けているに違いない。


彼からのメッセージが1日ほど返って来ないことがあるとは聞いたが、もしかしたらそれ以上に来ていないのでは。凛ちゃんの仕草を見ているとそんな風に思ってしまう。

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