(誕生日)

◇◆◇



嵐が去った後の店内は とても静かで、時間が経つのが早く感じた。


時刻は21時半を回り、まもなく閉店を迎えようとしている。



『鈴見さん、今日は災難だったね』



「本当ですよ……誕生日なのに。


 でも、氷馬さんがいなかったら私、どうなっていたか……。


 本当にありがとうございました」




『ううん、僕も内心 震えてたから』



「全然そうは見えませんでしたよ」





『いやいや、


 あれ?

 鈴見さんって、高校生だっけ?』



「いえ、今 短大の1年生です」




『へぇー じゃぁ2コ下かぁ


 もっと下かと思ったよ』





「あ、名前で呼んでもらって大丈夫ですよ?


 私も勝手に氷馬さんって呼んじゃってますし」




『店長が名前で呼ぶ文化を根付かせたよね。


 じゃあ……』




「凛です」





『……凛ちゃん……』





「あれ、氷馬さんて結構 照れ屋さんなんですね? ふふっ

 さっきのと全然イメージ違って 可笑しいかも」





『そんなにぎこちなかったかな?』





「そこが可愛いんですけどね」

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