(欠点)

「氷馬やるじゃん!」



体育の時間、バレーでスパイクを決めたときに友人から頭をバシバシ叩かれた。



『いてっ!』



「お前、成績いいのに運動も出来るとか意味わかんねーんだけど?おまけに顔までいいしさ。」



バレーは中学の体育でやっただけでほぼ初心者だけど、サーブにしろスパイクにしろ何故かうまいこと点が入る。もともと運動は得意だし、勉強も一応上の方に位置している。



「よーし、高校3年間のうちにお前の欠点暴き出してやるわ!俺のスキャニング能力舐めんなよ?」



欠点、か。


それなら大丈夫だよ。


言葉にこそ出さなかったけど、僕は欠点だらけだからさ。


臆病な自分がまさにそう。



「まぁいいや、お前が同じクラスで良かったぁ~~!


 とりま、この調子で球技大会のサッカーも頼むぜ!」



スポーツをしているときが一番楽かもしれないな。


溜息つくこともほとんどないし。




「氷馬くーん!」




隣のコートで授業していたクラスの女子が僕に手を振っている。



軽く会釈しながら体育館を後にしようとしたら、今度は違う友人に頭をぐしゃぐしゃっとされた。



「おい、氷馬ぁ。

 そのイケメンムーブ腹立つわぁ~


 あっ、なーんて うそうそ!

  

 そんな顔すんなって」



「ちょっと、浦上くん!

 氷馬くんにちょっかい出さないでよ~?」



更衣室に入る前で、さっき僕に手を振った女子が会話に加わる。



「えー、いーじゃん。


 つーか田口さぁ、


 ブラ透けてんぞ?」



「きゃああ!

 サイアクなんですけどー!」



浦上と田口さんのやりとりを見てちょっと失笑してしまったけど、浦上みたいに思ったことをストレートに言えるのが羨ましく思った。



「田口、今度誰か紹介してよ?」



「はぁ。

 このクラス、マトモなの氷馬くんしかいないじゃん……


 ねぇ、氷馬くん」



『えっ?

 はぁ、どうも……』



「おいおい、氷馬困らすなよ

 こいつ シャイなんだからさあ」



「みんな言ってるけど氷馬くんって、純情だよね


 ふふっ、かわいい」




こんな話になると心なしか、気持ちにブレーキが掛かり出す気がする。


ほら、これも欠点だよなぁ。


いつかこの引っ込み思案な性格が直ると信じたい。

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