第15話 悪魔の王

シファス王国軍は、すぐに壊滅状態になった。

悪魔、恐るべし。

たった四人(?)で軍を壊滅させるなんて。

でも、そんな強い悪魔たちを従えている王とやらはもっと強いんだろうなー。怖っ。

まあ、私もそれなりには強いですし?

たぶんきっと殺されないし、大丈夫、だよね?

っていうか、シファス王国の件、戦争賠償金せんそうばいしょうきんをきっちり後で請求しなきゃ。

そんなことを思っていると、

「さて、行きましょうか?」

と、私をお嬢さんとさっきから呼んでくる悪魔の男が言ってきた。

「ちょっと待って、あなた、名前は?」

名前分からないからさっきから心の中で、お嬢さんと呼んでくる悪魔の男、としか呼べない。さすがに長すぎる。

「うーん、そうですねえ。偽名でしたら教えてあげましょう。真名を教えることは悪魔にとって自殺行為以外の何物でもないので。」

そうなんだ。

「偽名は、クフィト、ですよ。」

「へえ、そうなの。」

偽名を教えてもらうのはなんとも微妙な気分になるな。

心の中ではクフィトと呼ぼうかな。

「さあ、行きましょうか?」

「え?いや、明日じゃダメ?」

「え?どうしてですか?」

「だって、いまめっちゃボロボロだよ、私。こんな格好で会うわけにもいかないでしょ。明日になったら魔力回復するだろうし、明日で良くない?」

「―――そうですね、確かにあなたはかなりボロボロなようですから、、、わかりました。明日でもいいでしょう。その代わり明日になったらすぐに行きますよ?」

「うん、わかった。あ、魔王城泊っていく?それとも野宿するの?」

「泊っていいのでしたら、お言葉に甘えさせていただきます。」

「うん、空いている部屋たくさんあるから泊って行っていいよ。」

私は、そう言った。

そんなこんなで、次の日になった。

次の日になると、言われていた通りすぐに呼びに来た。

私はいつもより早く起きて回復した魔力で傷を治そうとしていた。

カリスにつけられた傷、全然治らないんだよね。

竜につけられた傷って治らないものなのかな?

普通の怪我とかだったらすぐに治るのに。

「あのー、今日こそ行きましょうよ。」

「うん、ちょっとまって、まだ支度できていないから。」

私はそう言って、傷口を治すのをとりあえずあきらめた。

そして、傷口が隠れるような服を選び、着た。

そして部屋を出ると、倒れているラフィスとクフィト達悪魔がその場にいた。

「これ、どういう状況?」

「これ、とは?」

「どうして、ラフィスがたおれているの?」

「私があなたを呼ぼうとしたら、それは自分の役目だとか言ってラフィスが邪魔をしてきたので四人(?)でコテンパンにしたまでです。」

なるほど。

ラフィス可哀想。

流石に4対1では、勝てないだろうな。

「ラフィス、大丈夫?」

私はそう言って、倒れているラフィスを立たせてあげた。

ちなみに頭を撫でながら魔力を少し、分けてやる。

すると、たちまち笑顔になり、

「大丈夫ですっ。心配してくれてありがとうございます。」

と、そう言った。

「なら良かった。」

私はそう言った。

「で、我らが王に会いに行こう。」

「うーんと、君たち悪魔の王ってことだよね?」

「ああ、そうだ。あのお方は、全ての悪魔を従える最強の王だ。」

その声には、尊敬の気持ちがにじみ出ているように思われた。

「そうなの。で、どこにいるの?」

「地界にいらっしゃる。」

地界?

そこはどうやって行くんだろう?

「えっと、どうやって行くの?」

「転移で行けるぞ。」

なるほど、転移しないと行けないようになっているのか。

「じゃあ行こうか。『転移』」

「えっ?ちょっと待って??」

どうしよう、一人で行くのは嫌なんだけど。

普通に誰か一緒に連れて行かないと、もしものことがあったときに困るんだけど?

そんなことを思っていると、すぐになんだか禍々しい雰囲気の所に来てしまった。

目の前にはとても大きな扉がある。

魔王城の玉座の間に入るときにある扉と同じくらい大きい扉だ。

「我が王よ、魔王様をお連れしました。入ってもよろしいでしょうか?」

クフィトはそう扉の向こうにに向かって言った。

どうやら、その全ての悪魔を従える王様とやらはこの目の前の部屋の中にいるらしい。

「入れ。」

中から低く少し恐怖を感じそうな声が聞こえてくる。

だが、妙に少し安心する声だった。

どこかで、聞いたことがあるような気がする声だった。

ギィィ、と音を立てて扉が開く。

中央にある骸骨がいこつなどで飾られたきらびやかな椅子には禍々しい雰囲気の美しい一人の男が座っていた。

とても、恐ろしいようにも見えたが、初対面なのになぜかとても懐かしくも思える外見だった。

その男の見た目は、真っ白な髪で青い瞳で、20代半ば、といった感じだった。

「女神レフィス。俺のことを覚えているか?」

その男は怒りを秘めた声で、わたしにそう言った。

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