幕間 執事ヨル
私は魔王様の執事でヴァンパイア族のヨル。
魔王様の配下の中ではそれなりに有能だと評判である。
正直言ってかなりうれしい。
私は、初代魔王様のころから、ずっと魔王様に代々使えている。
つまり、魔王城にいることかれこれ10000年以上になる。
その間、何度か魔王城を建物の老朽化による建て替えなどもあり、少し魔王城の作りは変わってきているが、大部分は今も変わっていない。
私が、現、魔王様と会ったのは、現、魔王様が生まれて2か月ほどの時だった。
現、魔王様はとても美しい紫色の髪に赤い瞳を持っていた。
その姿は、初代魔王様の容姿とうり二つだった。
本当に、初代魔王様の生まれ変わりだといわれても疑わないほどに。
先祖返り、というものなのかもしれないが、魔王様の魔力量は先代魔王様やその前の魔王様よりも比べ物にならないくらい多かった。なので、その魔力による威厳もすさまじかった。その魔力量がゆえに、配下からもかなり怖がられていた。当の魔王様は、そんなことは一切気にしてない様子だったが。そして、何より、いつも退屈そうであった。魔王としての職務はすぐに終わらせてしまうし、何もすることが無さそうで、一日中退屈そうに座っていらっしゃることもあった。
しかし、ある時魔王様は、変わられた。
あれほどあふれていた、魔力は今までのが嘘だったかのように消え失せ、それでいて威厳は失われていなかった。
魔国の者にとって、魔力を消す、ということは至難の業である。
歴代の魔王様の中でも、魔力を消すことができたのは、本当にごく少数である。
先代の魔王様であってもそれはできなかった。
そして、性格も変わられた。
今までは、どんなことに対しても興味が無さそうで、退屈そうな表情をされておられたのに、今は、とても穏やかな優しい表情で配下のことを見てくださっているのだ。ラフィスの時の件もそうだった。
あの者_ラフィスは、傲慢にも魔王様のことを下に見ていそうな感じだった。
それなのに、魔王様はなんとお心の広いことか、一発殴るだけでお許しになられたのだ。
そのことに、ラフィスも気が付いたのか、気が付いていないのか、その一件以降は魔王様に今まで以上に献身的に尽くすようになった。というか、その魔王様への視線が少し熱のこもったものになっているような気がする。もしかしたら魔王様のことが__?いや、あれはそれとはまた違うものだったな。なんだろうか。
まあ、それはともかく、魔王様は本当に変わられた。
これなら、魔王代々の者たちがずっと願い続けてきた悲願を達成できるかもしれない。今後の魔王様のご成長が楽しみである。
どう、変わっていかれるのか。
「ヨル、魔王様の職務があるのですが。」
ああ、そうだった。
魔王様から任されたのだった。
「ああ、そうだった。」
そう言って、私はその書類のある魔王様の職務室へと向かった。
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