第5話 交渉

 進化先は『ガスブロブ』『ブロブ』

 と、もう一つ。

 特殊進化ってのが出た。


『ドッペルゲンガー』


 これは!

 もちろん、ドッペルゲンガーを選ぶ。

 進化はしたけど、見た目はまだブロブのままだ。

 スキルは『擬態』

 まぁそうだよね、ドッペルゲンガーだもんね。


 おっと、そうだ、回復士

「た、助けてくれたの?」


 僕に向かってそう言ってくる女の子。

 んー、そうかぁそう見えなくもないのか。


 悪いけど、利用させて貰おうかな。


 戦士の男に擬態する。

 えっと、こういう時は

「悪いアンデッドじゃないよ!」


「………」


 あれ? スベッた?


「えっと、これはね、昔のゲームであるセリフで……」


「いえ……あの、その……服を着ていただけませんか?」

 あ! 裸だった!


 慌てて戦士の服を着る。


「ごめん、ごめん、アンデッド化したせいか、ちょっと性格変わちゃってて、なんか常識とかが少し欠落してるみたいなんだよね」

「大丈夫です。 助けていただいてありがとうございました」


「でね、助けた代わりにって言うと申し訳ないんだけど、協力して欲しいんだよね」

「どんな事ですか?」


 俺は今までの事を説明した。


「それで、出来れば全部復讐が終わったあと、浄化して欲しいんだ」

「え! 浄化されちゃうんですか!」


「うん、やっぱりこういう存在ってダメだって思うしね。

 復讐さえ出来ればそれで本望だし」

「……分かりました! 命を助けていただいた御礼として復讐が成功した後に責任をもって浄化いたします!」


「ん、ありがとう」

 そう言って握手した彼女の手は火傷するかと思うくらい熱く感じた。

 自分がアンデッドなんだと改めて実感する出来事になってしまった。


「じゃあ、まずは復讐相手に勝てるように強くなろう!」

「はい!」

 他の亡くなった人の分からもアイテムかき集めて、パンパンになったリュックを三つ担いで下層へと向かった。


 ー 一二階 ー

「あのぉ、なんかズルくないですか?」

「うん、俺もそう思う」


 ドッペルゲンガーの擬態はモンスターの種族も擬態する。

 同じ種族のモンスターはダンジョン内で争わない。

 パーティにしてしまえば、一緒に居る人間も襲わない。


 結果、一方的にモンスターを倒すだけの簡単なお仕事になってる。


「でも、安全にレベル上げられるんだし、危ない目にあうよりいいんじゃない?」

「それはそうなんですけどぉ、なんていうか、みんな苦労してるのにこんなに楽して良いのかっていう罪悪感的なものが……」


「目的の為には手段は選んでいられない! 効率重視でいかせて貰うよ」


 ー 三か月後 ー

 ドッペルゲンガーから、『シェイプシフター』に進化した。

『変化』のスキルを獲得。


 ボス戦で一緒に行動するようになったあの日から、僕は戦士『タケル』として地上で暮らしている。

 回復士の女の子『ユウキ』と一緒に二人で暮らしていた。


「そろそろだな」

「やっぱり、諦めてくれないのね」


「それが僕の存在意義だからね」

「……もっと一緒にいて欲しい」


「僕はアンデッドだからね、いずれその事実はバレるよ」

「そうしたら、私と一緒に逃げよ」


「嬉しいけど、やっぱりダメだよ」

「……」

「約束は守るでしょ?」

「……うん」

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