第二話 会議と薬中
ザバルド爺に重鎮を集めるよう頼んで数日。
今日ならばこの家の重鎮たちが集まれるそうだ。今は会議室に先に行って待っている状態である。
しかし、重鎮全員が数日で集まれるとは驚きだ。メレネイア家の家臣ともなれば、忠誠心はしっかりあるみたいだね。
ここで少し『魔法』についての話をしたいと思う。
魔法と言うのは、主に二種類に分けられる。
生まれたときから所持している『先天魔法』と、努力などによって習得する『後天魔法』である。
とは言え、後天魔法の説明は今は置いておこう。
先天魔法の例として、ボクがもつ『
ボクの持つ先天魔法、『魅了』は歴代のメレネイア家当主が所持する魔法だ。
無意識で常時発動するタイプの魔法で、効果は相手の自分への認識が対等以上である場合、又は相手が自身へプラス感情を抱いている場合に相手を魅了するというものだ。
そして、この『魅了』の効果は魔法の中でもトップクラスだ。
この魔法のお陰でメレネイア家は未だ存続していると言っても過言では無い。
なぜなら、この魔法があれば家臣の謀叛の減少、敵を作りにくい等の効果が得られるからだ。
この魔法のお陰で、数日で重鎮が全員集まれたり、今でも復興の妨害程度で済んでいるのだろう。
――ボクが部屋に入ってから数十分、全員揃ったようだ。
「全員揃ったみたいだね。それじゃあ、領地運営に関する会議を始めよう」
♢♢♢
会議が始まって直ぐ、ボクは自分の考えを話し協力を求めたのだが――
「国境付近の民だって領民です! 見捨てるなど――」
「民のためにならなければ本末転倒ですぞ!」
「理屈としては理解できても、賛同することは出来ませぬ!」
反応が大体ザバルド爺と同じだった。
というかまんまの人もいたし。
しかし、みんなこう言えば黙ってくれた。
「ですが、貴方達の持つその高潔な精神で現状を改善できましたか? 少なくとも、私はそうは思えません」
本来、ここで
しかし、メレネイア家の家臣は『
つまり、正論パンチでへし折っても不満を抱かれることはないのだ。多分。
という訳で、家の重鎮たちも説得(?)したので早速改革に取り掛かかろうと思う。
あと、ザバルド爺に会議に居た若い男性を呼んでもらった。
少し気になる素振りをしていたからね。
♢♢♢
という訳で、呼び出した若い男性と個人面談である。
若い男性は、外見はあまり良くないが垂れ目なのも相まって優し気で誠実そうな印象を与える。
突然自らの主人に呼び出されたためか緊張しているようだが、ボクはそんなこと気にしない。
時間がもったいないからね。ボクは効率至上主義なんだ。
「それじゃあ、キミの名前から聞かせてもらえる?」
初対面相手に失礼かもしれないが、こちとら侯爵なのだ。偉いのだ。しかも相手は家臣。逆に謙るのも良くないだろう。
「お、お初にお目にかかります。シードル男爵家嫡男のクラエル・シードルと申します」
「へー。嫡男なのに会ったことない気がするんだけど」
というか、相手もお初だと言っている。
「私は病弱でして、幼少期からあまり外に出れなかったのです。ですが、最近は持病も落ち着いているため本日は父の代理として出席させて頂きました」
「事情は理解したよ。だけど、今回は大切な会議なんだ。そんな会議に代理を立てるとは、キミの父親はさぞ忙しいんだねぇ?」
苛立ちを含めた声を出してみる。
クラエルくんも少し動揺しているし、多分いい感じだ。
「ち、父親は最近病弱でして……。そろそろ私に引き継がねばならないため、私が馳せ参じた次第でございます……」
「ふふふ、少し揶揄っただけだ。安心していいよ」
茶化してはみるが、経験の少ないクラエルくんは相当怖かっただろう。
なんたっていきなり当主の怒りを買いかけたんだもの。
…………お前も経験少ないだろうって?
残念だったね。ボクは自分へのツッコミは受け付けていないんだ。
「それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
安堵の表情を見せていたクラエルくんの表情が引き締まる。
別に殺す訳ではないから安心してほしいのだけど。
ボクは少し間を開けてから口を開く。
「キミ、違法薬物やってるよね?」
ボクの言葉を聞いたクラエルくんは、顔を凍り付かせるのだった。
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