第2話 運動? 何それ美味しいの?

「はぁ……そんな……」

 四時間目の授業が終わり、絵里香と一緒にご飯を食べている時、私は先生から渡されたある一枚の紙に書かれた数字を見てそんなため息をこぼしていた。

「何~? 美結がそんなに大きなため息をつくなんて。明日は雪でも降るかな?」

「……」

 第一、今はまだ5月になったばかりの春まっしぐらの季節。

 そんなツッコミをする気が失せる程に、私はある問題に直面していた。

「って! 無視……⁉ これはいよいよ深刻な悩みだったりする?」

「絵里香……そう言うなら最初から茶化さないで……」

「あはは~ごめんごめん! それで? 何をそんなにため息をついてたのさ?」

「……中村君には言わないでよ?」

「言わない! 言わない! それで」

「分かった。実は……」

 念のため、他言無用でいるよう釘を刺してから、私が手に取っていた紙を絵里香に見せることにした。



「これって……あ~身体測定の結果の紙ね……これがどうかしたの?」

「実は……体重が、5キロも増えちゃったの」

「あ~大体言いたい事は分かったよ。つまるところ、体重が以前よりも増えてしまってショックでご飯も喉を通らない……と」

「いや……そこまでは言ってないし、ご飯は普通に食べてるから……」

 まぁ少なからず体重が増えたことに関しては、ショックであるけれど……



「……高校に入る前は中学にバトミントン部に入ってたのもあって、それなりに体重は維持できてたの」

 弁当を食べ終わり、用意した水筒の麦茶で喉を潤してから、私は話を続けた。

「うんうん。適度な運動が何よりだからね~」

「だけど、高校に入ってからは自主的に運動しようとする意欲も無くなっちゃって……」

「うんう……ん? けど、確か私たちの高校ってバトミントン部あったでしょ? 入らなかったの?」

「入ろうとは思ったよ? けど……」

「けど?」

「あまりにもスパルタっていうか、とにかく厳しいって噂聞いたから、入るのは止めたの……」

「そう……」

 何も体重が増えたのは単に運動する機会が減っただけじゃない。入学当初、私はクラスのみんなと上手く打ち解けられず、けっこうな頻度で保健室の先生のお世話になっていた。 

「……なるほど。まぁ大体の話は分かった。それで? どうしたいの? 痩せたい?」

「そりゃ、痩せれるのならそうしたいけど、すぐには難しいでしょ?」

「確かにね……けど、」


* * *

「だったら……ダイエットしてみる?」

「え……? ダイエット?」

 放課後の帰り道、突然絵里香からそんな提案をされる。

「そ。体重が増えたこと気にしてるんでしょ? だったら行動した方が良いって!」

「それは……」

 絵里香に言う事はもっともだ。私が増えた五キロを気にしていないのなら、それで良いと思うし、放置する。

 だけど……どうせなら、理想的な体型を維持するを目標にすえずとも、せめて今の体型から最初の体型に戻すぐらいの事はしたいと思う。

「そ・れ・に……」

 そこで急に絵里香は耳元まで顔を近づけて……

 「もし海に誘う時、中村君には理想的な体型でいたくない?」

「それは……分かった。絵里香。私やるよ。ダイエット!」

「そう来なくっちゃね。じゃあ早速今週の土日使って運動だー!」

「おー!」

 こうして絵里香が考えるダイエット週間が行われることになった。

 

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